<中日4-1阪神>◇28日◇ナゴヤドーム

 森野が戻り、役者がそろった!

 中日森野将彦内野手(33)が阪神戦で3試合ぶりにスタメン復帰し勝利に貢献する2安打。復調の兆しを示した。阪神を3タテし、ナゴヤドームでの連勝も11に。貯金は今季最多の15まで膨らんだ。今日29日からの巨人との首位攻防戦に向け、森野も戻った。フルメンバーで東京ドームに乗り込む。

 必死さが胸を打った。森野はベンチからのヒットエンドランのサインに右手1本でこたえた。1-1の7回無死一塁。苦手のメッセンジャーの135キロ変化球にタイミングを外されたが、執念でバットに当てた。右翼線の内側に入れて二、三塁とチャンスを拡大。最高の結果で続く谷繁の決勝打を呼び込んだ。主砲が、7番で放ったエンドランによる一打。手放しで喜べるものではない。だが、森野は心から言った。

 「何とかバットに当てた。あれは、野球の神様が打たせてくれたヒットだと思います」

 不振で24日広島戦以来、3試合ぶりの出番だった。リーグ連覇に貢献してきた主砲は苦境にいる。打撃不振にけがも重なり開幕から低調。高木監督の信頼を得られず、26日の今カード初戦ではスタメン落ち。三塁の座を何と高卒ルーキーの高橋周に譲るという屈辱を味わった。前日27日も三塁スタメンは若手の堂上直。連勝した2試合はベンチに座っているだけだった。

 行動に危機感がにじんだ。27日に続き、この日も2日連続で早出特打を敢行した。期待値はともかく、実績ゼロの若手と比較され同等の扱いをされても腐らず、打席で違いを示そうと汗を流していた。

 優勝した昨年序盤も同じだった。選手個人への言及をしなかった落合前監督から、乗り切れないチームの象徴として名指しで「森野だよ。森野、森野」と発奮を求められたことがあった。この時「自分はそういう特別な立場」と漏らしている。森野は、和田との2人のバットがチーム浮沈のカギを握っていると力説していた。

 指揮官が代わり、口には出さなくなったが秘めた思いは同じ。高木監督は「言っとるように、森野のバッティングが絶対に必要。何とか復活してほしい」。首位を争う巨人戦を前に、森野が浮上のきっかけをつかんだことを喜んだ。

 森野は今、プライドを取り戻す戦いの最中にいる。この日は2安打したが、帰り際「明日です。これを続けないと」と結んだ。次なる相手は巨人。ひとまず森野も戻った。首位をひた走る中日は、巨人を迎え撃つ態勢を整え東京ドームに乗り込む。【八反誠】