<日本ハム2-2西武>◇16日◇札幌ドーム

 頼れるベテランが帰ってきた。右手甲を打撲して欠場していた日本ハム稲葉篤紀外野手(39)が、16日西武戦(札幌ドーム)で3試合ぶりに復帰。同点の9回に左翼線二塁打を放ってチャンスメークし、存在感を示した。チームはサヨナラ機の無死満塁でもあと1本が出ず、今季7度目のドロー。それでも4位西武と引き分けたことで、北海道移転後9年で7度目のAクラスターンが決まった。

 重苦しい展開に沈んだスタンドのファンを盛り上げたのは、稲葉のバットだった。右手甲の打撲から復帰し、3試合ぶりの実戦。先頭打者で迎えた同点の9回、左翼線へ二塁打を放ち、無死満塁の絶好機をつくる立役者になった。「手は全然問題ないです。でも、得点機に打てなかったですから…」。序盤の凡退を悔やみ、サヨナラ勝利にもつながらなかったため表情は浮かないが、チームになくてはならない存在が帰ってきた。

 「ドラえもんみたい」という患部の腫れは、まだ引いていない。フリー打撃を再開したのもこの試合前からだったが、6回にも左翼へライナー性の痛烈な打球を飛ばし、打線の核として相手バッテリーに恐怖感を与えた。

 午前10時。グラウンドに姿を現した選手は、誰もが先発メンバーを知らなかった。稲葉の状態を練習で確認し、GOサインが出ればすぐに起用したい栗山監督の意向で、選手への通達は試合の直前になった。これは今季初めてのこと。それだけ、首脳陣も復帰を待ち望んでいた。

 9回無死満塁という最大の好機も生かせず、ここ数試合続く得点力不足は解消されないまま。稲葉も「初回にもう1点取っていれば違った展開になった。何とかしようと力みすぎる。タイムリーが出ないというのは伝染するから」と深刻に受け止めたが、打率3割4厘を打つチームリーダーの復帰は、何よりも明るい材料となった。

 4位西武と引き分けたため、本拠地移転9年で実に7度目のAクラスターンを決めた。今日17日が球宴前の前半最終戦。栗山監督は「ここまで今年何をやってきたのかを見せられるような試合にしたい。内容はどうでもいいから、勝ちたい。勝たないと何も変わらない」。本拠地に戻って、稲葉も戻った。あとは、勝利だけだ。【本間翼】