ソフトバンク小久保裕紀内野手(40)が14日、今季限りでの現役引退を表明した。王貞治球団会長と秋山幸二監督に決意を伝え、ロッテ16回戦終了後、福岡ヤフードーム内で会見を開いた。プロ19年目の今季は6月24日に史上41人目となる通算2000安打を達成した。チームの主砲として活躍を期待される中での突然の表明に、衝撃が走った。

 突然の発表だった。試合終了から20分後。前もって内容を明かさずに設定された会見場に、小久保はユニホーム姿のまま現れた。そして自らの決断を明かした。「午後、王会長と秋山監督、小林(海外兼中長期戦略部)部長に、今季限りで現役を引退するという話をさせてもらいました」。目は赤く、少し潤んでいた。

 急な結論ではなかった。体の衰えを感じながら、次第に気持ちが固まった。5月22日に通算2000安打に王手をかけながら、腰椎椎間板ヘルニアで離脱。登録抹消もあって王手から33日かかって達成した。その後は打率も下降気味で、この日もスタメンを外れるなど出場機会が減っていた。ここまで本塁打は2本にとどまっている。「体は元気だけど、フリー打撃でボールが飛ばなくなったり、完全にホームランだなと思った当たりがセンターフライだったり。試合に出られなくなったというより、自分の実力」と、決断に至った理由を明かした。

 先週、試合前のフリー打撃はすべてフルスイングを試みていた。「今は全力で振ることだけを考えている」。ただスタンドインは、劇的には増えず「飛距離が落ちたことを、今はそれほど気にしなくなってきている」と漏らした。長距離打者が、飛距離の減退という現実を受け入れた時、引退の2文字が頭に浮かんだのは必然だったのかもしれない。

 多忙な王会長のスケジュールを確認し、伝えるタイミングがこの日だった。そしてすぐに発表。会見では「シーズン中に個人的なことで迷惑かけて申し訳ない」と何度も言った。秋山監督には「悔いはないのか、気持ちは変わらないのかと聞かれた」と慰留された。それでも迷わず言った。「この年齢までやれた。今年で現役を終わることに悔いはない」。ロッテに敗れた試合後、ロッカールームでナインにも伝えた。「チームメートに話さず、このまま過ごすのが嫌だったので」。小久保らしい気遣いだった。

 引退を表明したが、今季残り43試合は完全燃焼に向けて努力を続ける。「ホークスの優勝の可能性が残っている。秋に悔しい思いをしたくない。今日で終わりじゃない。僕もユニホームを着てベンチに入る。リーグ3連覇を成し遂げて終わりたい」。最後は少し笑顔も交えながら、主将としての役目をシーズン終了まで果たすことを誓った。

 ◆小久保裕紀(こくぼ・ひろき)1971年(昭46)10月8日、和歌山県生まれ。星林-青学大。92年バルセロナ五輪で銅メダル。93年ドラフト2位でダイエー入団。2年目の95年に28本塁打で本塁打王。97年に打点王。99、00年のリーグ連覇に貢献。03年オープン戦の本塁クロスプレーで右膝を負傷し、1年間出場できず。同年オフ、異例の無償トレードで巨人移籍。FAで07年にソフトバンク復帰。11年にプロ野球16人目の通算400本塁打。同年日本シリーズで40歳1カ月の史上最年長MVP。今年6月24日の日本ハム戦ではプロ野球41人目の通算2000安打を達成した。182センチ、87キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸3億円。