<楽天9-2西武>◇9日◇Kスタ宮城

 エースを援護するには十分過ぎるほど、楽天打線がつながった。首位西武相手に15安打9得点。中でも牧田明久外野手(30)が、7回のダメ押し6号ソロを含む2安打3打点の活躍で、田中の8勝目をアシストした。チームは4連勝で4位に浮上し、明日11日からは3位ソフトバンクとの3連戦で、少しでも差を縮める。

 やっと目覚めた。8月26日と9月2日の2度、エース田中を援護できなかった打線が、1回から奮起した。3回以外は毎回安打を放ち、15安打を放って9得点。何度も何度も右翼スタンドから大歓声が響いた。星野監督は「点を分散させてあげられればいいんだけど、そうはいかんな」と、エースにとって余りある援護に目を細めた。

 大量点を締めくくったのも目の覚める1発だった。牧田が7回、チームトップとなる6号ソロ。十亀の147キロの内角直球をさばき、ライナーで左翼スタンドに突き刺した。「小さい頃から練習してました」と、元日本ハムの新庄剛志氏のように、打った瞬間バットを美しく放り投げた。「理想といえば、理想ですね」と納得の打撃だった。

 悩み、苦しんでたどり着いた理想の形だった。両翼101・5メートルと広いKスタ宮城。本塁打を期待されたがなかなか入らない。スイングの形が崩れ、打率も2割1分台まで落ちた。7月上旬、試合前に耳鳴りがした。「あんな耳鳴りなんてしたことなかった」。精神的にも追い込まれていた。

 それでもバットを20グラム軽いものにチェンジするなど、何とかしたい思いが強かった。星野監督からは「バットが遠回りしている」と指摘され、約2週間前からトスバッティングも始め基本からやり直した。「もう本塁打は狙ってない。ライナーの角度で飛ばすことを考えてます」。本当はアーチを描きたい。その気持ちを抑え、安打狙いの意識に変えた。そしてこの日、ライナーの打球が左翼スタンドまで届いた。

 打線の爆発もあり、4連勝で4位に浮上した。大久保打撃コーチは「勝ち方を知ってるやつが打つと大量得点につながる」と振り返った。それはベテランであり、チームの核となる選手たちのこと。1発を打てる素質を持つ牧田もその1人のはず。「これを続けられるように頑張ります」。本領は、CS進出をかけたシーズン終盤で見せつける。【斎藤庸裕】