<セCSファーストステージ:中日4-1ヤクルト>◇第3戦◇15日◇ナゴヤドーム

 これぞミラクル突破だ。中日がヤクルトに豪快な逆転勝ち。6年連続でクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ(17日~、6試合制)を決めた。1点を追う8回、1死満塁からトニ・ブランコ内野手(31)が左翼中段に逆転グランドスラムを突き刺した。3番森野、4番ブランコをそれぞれ降格させる改造打線を組み、先発山本昌から川上、山井、浅尾と惜しみなく投入。執念の采配が光った。リーグ覇者巨人への挑戦権をゲットした。

 奇跡が起きた。ナゴヤドームが総立ちになった。ブランコがド派手なガッツポーズで生還だ。ここ一番で、ついに1発が出た。不振の主砲が逆転のグランドスラムでうっちゃった。「気分は最高だ。集中して、最低でも同点の犠飛と思って打席に入ったんだ。でも人生で一番素晴らしい打球になったよ」と、主役は夢見心地だった。

 ヤクルト投手陣の前に1点が遠く、追い込まれつつあった8回1死満塁で打席に立った。「000」。電光掲示板の打率はCS8打数無安打を示している。1球ごとに上がったドームのボルテージに乗せられるように、バーネットの144キロを左翼席にはじき飛ばした。これが4番の仕事だった。主砲の1発に高木監督も興奮を隠せない。「まさに起死回生。もう敗戦の弁も考えていたよ。苦労したけど最後に期待のブランコに1発が出て勝てた。スタンドも最高に盛り上がってたし、熱い声援のおかげの1発だ」。

 前日は完封負けで逆王手をかけられた。この日、不動の打線を大改造した。無安打のブランコを下げて4番に和田を起用。不振の森野も7番に下げ3番に井端を入れた。3番井端、4番和田、5番ブランコ。実はこの中軸、今季対戦1勝3敗の村中から唯一の白星を奪った5月9日、監督の故郷岐阜での試合と同じだった。「あれにあやかったんだ」。そして最後の最後で3人が「線」でつながり、組み替えは大当たりとなった。

 執念のリレーも決まった。同監督は「今日のような試合の先発は若手にはプレッシャーがかかる。だからマサと川上でいったんだ」と明かす。先発は47歳山本昌。自身のポストシーズンの最年長登板記録を更新した左腕は3回を1失点。2番手川上は2回を無失点に抑えた。バトンは守護神の山井に早々と受け継がれ、最後は浅尾が2回を完全で締め「今日はオールスター継投!」とご満悦だった。前回監督を務めた94年の「10・8決戦」で巨人に敗れた教訓を生かした投手起用でヤクルトを封じた。当時を知らない主砲でさえ「マサさんが投げるといいことがあるんだ。CS頑張って日本一になれるように頑張ります。必ず名古屋に帰ってきます」と声を大にした。

 指揮官が動いて、動いて、ナインが応えた。高木監督は「2位のメンツにかけてヤクルトに勝つことしか考えてなかった。今巨人のことは頭にない。一泡吹かしたろかぐらい」とシーズンのリベンジを誓う。守道竜が勢いづいた。【松井清員】

 ▼ブランコが逆転満塁本塁打。プレーオフ、CSの満塁本塁打は11本目。逆転満塁本塁打は82年テリー(西武)04年カブレラ(西武)09年スレッジ(日本ハム)に次ぎ4本目で、セ・リーグのCSでは初。ポストシーズンで中日選手が打った満塁本塁打は、04年日本シリーズの谷繁に次いで2本目。