<国際強化試合:日本2-0キューバ>◇16日◇福岡ヤフードーム

 ブランクを少しも感じさせなかった。7年ぶりに指揮を執った山本浩二監督(66)が新生ジャパンの初陣を会心の白星で飾った。平均年齢26歳の若侍たちが躍動し、世界ランク1位のキューバに完勝。笑顔で選手と勝利のハイタッチを終えると「まずは初戦を勝ててうれしい。(若い選手の)アピールをひしひしと感じた」と、満足そうに振り返った。

 来年3月のWBC第1ラウンドで同組に入っているキューバとの対戦。緊張し、気持ちも高ぶっていた。しかし、やるべきことを見失うことはなかった。「(7年前に)監督をやっていた時と同じような気持ちでゲームができた」。ベンチから選手の動きに細かく目を配り、冷静に試合の流れを見極めた。

 「思い切ったプレーを」。試合前に選手へかけた激励の言葉を、自身の采配でも体現した。1回、無死一塁。大島への指示は送りバントではなく強攻策だった。一ゴロで失敗に終わったものの、一塁に残った大島にすぐさま盗塁のサインを出した。初球から最高のスタートを切って二盗を成功させた。山本監督は「チャンスがあれば動こうと思っていた。本当にいい走塁やった」と、うなずいた。

 「強化試合とはいえ、勝ちにこだわる」。山本監督の思いは、投手陣にも伝わった。この日唯一のピンチだった5回2死一、二塁の場面では、迷わず今村に交代。敵に傾きかけた流れをすぐに引き寄せる絶妙なタイミングでの継投だった。6人をつぎ込み、キューバ打線を3安打完封。「しかも無四球。それがうれしい」と、目を細めた。

 運命的なものを感じる初陣でもあった。88年のオフ、広島監督に就任した直後の初仕事がキューバ遠征だった。結果は1勝4敗の完敗。「42歳だった。あれがわしの初采配やったな」。あれから24年。今度は侍ジャパンの監督として再戦し、圧倒してみせた。それでも、勝利の余韻に浸ったのは一瞬だけ。すぐに18日の2戦目(札幌ドーム)に視線を向け「今日と同じように戦う」と、力を込めた。【広瀬雷太】

 ▼日本が7人継投でキューバに完封勝利。キューバ戦の完封勝ちは5度目。過去は91年6月1日の日本・キューバ選手権で小池秀郎(松下電器)が12奪三振で完封。00年のシドニー五輪壮行試合では杉内俊哉(三菱重工長崎)土井善和(日本生命)大久保勝信(松下電器)のリレーで1-0完封。09年WBCで松坂-岩隈-馬原-藤川で6-0、岩隈-杉内で5-0がある。