侍ジャパン候補に入った中日吉見一起投手(28)が28日、代表への熱い思いを初めて口にした。来年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する日本代表のスタッフ会議が都内で行われ、代表候補33人を決定。山本浩二監督(66)の積極編成もあり、右肘に不安が残る竜のエースも選ばれた。30日までに暫定28選手を登録後、12月4日に候補選手が発表される。

 熱い思いがあふれ出た。岐阜県内のゴルフ場で中日選手会コンペに参加した吉見は、初めてWBC参加への意思を語った。

 吉見

 選ばれる選ばれないは別として、出たいという気持ちはある。正直、興味がある。こんなチャンスはないんで。

 5年連続2桁勝利という十分な実績と実力。日本屈指のコントロールを誇る右腕の代表入りは自然な流れだった。ネックとなったのが、シーズン終盤に負った右肘肘頭骨棘(こっきょく)骨折。これまで自身の発言の影響も考え、慎重なコメントに終始していた。この日は違った。候補に入ったタイミングに合わせたかのように、スイッチが切り替わっていた。

 約4時間に及んだスタッフ会議で山本監督は、腹をくくっていた。吉見とともにシーズン中に左肩を痛めた巨人杉内も代表候補入りさせた。来年3月の本番までの回復は不透明ではあるが、山本監督は「投手陣の故障者の関係で、1人か2人は前後するかもしれません」と先行きが見えない中、賭けた。

 決断材料になったのは心意気だった。山本監督は「選手は代表に選ばれたいという気持ちを持っていると思う。その意気込みを発揮してほしい」と意識の高さは、侍として求める要素の1つ。水面下の調査で、吉見が参加を熱望しているという情報をキャッチしていたようだ。

 イチロー、ダルビッシュらメジャー組6人の全員不参加で、描いた構想より戦力ダウンが必至の陣容。それを補うのは日の丸を背負う意義を感じ、それをパフォーマンスに転化できる侍。ケガの影響がないとはいえない状況で手を上げてくれた吉見のおとこ気は、浩二ジャパンの象徴でもある。

 竜戦士がWBCの舞台に立てば、06年の第1回で世界一に輝いた谷繁、福留以来となる。前回大会は辞退者が相次ぎ、出場者ゼロだった。吉見は今後の調整について「もし選ばれれば、頭に置きながらやっていかないといけない」とイメージを膨らませた。秋季練習中にブルペン投球を再開。右肘の回復は順調だ。春には竜のエースが世界舞台で投げる姿が見られる。