神様、仏様、藤浪様!?

 阪神のドラフト1位ルーキー藤浪晋太郎投手(18=大阪桐蔭)の育成法に「鉄腕プラン」が2日、浮上した。春夏の甲子園連覇に貢献した高校時代は連日、打者相手に投球感覚を養っていた藤浪に対し、球団も最適な調整法を検討中。プロの世界でも、連日のフリー&シート打撃登板という異例の練習法が導入される可能性もある。

 黄金ルーキーの育成法に「鉄腕プラン」が導入される可能性が浮上した。入団1年目から開幕ローテーション候補に入るなど、藤浪への期待は大きい。球団総出で「プロジェクトF」を立ち上げ、どう育てるかを慎重に話し合っている。壊してはいけないと温室栽培になりがちだが、藤浪自身はそんな方針にNOという情報が入った。球団関係者は言う。

 「毎日のように打者相手に投げて、投球感覚を維持しないといけないタイプらしい。報告は球団内に入っているはずだ」

 藤浪はドラフト指名後も大阪桐蔭のブルペンで連日のように投球練習を続けている。2日投げないだけで、調子が落ちるという。実際に、同校ではシート打撃で何度も藤浪を登板させてきた。超実戦派の調整がスター右腕の基礎を作ったといっても言い過ぎではない。

 プロの世界では、じっくりとブルペンで肩を作ってから、打者相手に投球練習を行うのが一般的だ。しかし、これでは藤浪の良さが消えてしまうかもしれない。

 かつて「鉄腕」の異名をとった故稲尾和久氏(享年70)は、入団1年目に主力打者の打撃投手を務めて鍛えられ、いきなり61試合に投げ21勝6敗、防御率1・06。驚異的な成績を残し、ここから飛躍の道が始まったという。藤浪の育成プランについては、今後、監督や投手コーチらで話し合われることになるが、稲尾流の実戦調整が特別で取り入れられる可能性はある。

 現在はすでにプロの統一球を使っての投球練習を始め「違和感はない。投げやすい」と手応えをつかんでいる。年末には中学時代に所属した「大阪泉北ボーイズ」主催の激励会に参加。かつての恩師や後輩たちから、熱い激励を受けた。投手では最高の栄誉とも言える「沢村賞」についても、「これから頑張って、そういう賞を目指していくべきだとは思います」とプロへの決意は固まった。

 大みそかには父晋さん(49)の実家がある岸和田市内でだんらんの時を過ごした。近日中に大阪桐蔭の練習に参加し始動の予定で、1月上旬の入寮まで後輩たちとトレーニングを重ねるつもりだ。

 ルーキーイヤーから1軍で活躍すれば、猛虎世代交代の象徴になり、さらに優勝のキーマンになることは確実。2月からの春季キャンプの1軍同行は内定しており「鉄腕プラン」が実施されれば、近年の球界では異例の育成法になる。

 ◆稲尾の1年目キャンプ

 即戦力として期待される立場になく、三原監督の指令で初日から打撃投手を務めた。「1分間に約8球。単純計算して1時間で480球。たぶん、練習は3勤1休だったと思う。1クールで1200球は投げていただろう。それがキャンプ期間中ずっとだった」と、のちに稲尾氏は振り返っている。大下、中西、豊田…。強打者が居並ぶ西鉄打線と対峙(たいじ)することは最高の教材にもなったという。当時は投手用の防御ネットがなく「3球に1球は打球を詰まらせようと、内角に投げ込んでいた」ため、自然と制球力も磨かれた。