【ホノルル(米ハワイ州)16日(日本時間17日)=鈴木忠平】WBC日本代表の柱として期待される広島前田健太投手(24)が、ハワイ大野球場で自主トレを公開した。世界一を狙う右腕は、ロンドン五輪でメダルラッシュと躍進した競泳日本代表を指導する中里賢一トレーナー(40)を帯同。金メダリスト・北島康介(30)らと同じトレーニングで世界一ボディーをつくりあげる。

 真っ青な空と、照りつける太陽の下、前田健は顔をしかめていた。常夏のハワイで繰り広げられていたトレーニングは地味で、厳しいものばかり。これこそが世界一への歩みを支えてくれる練習だという。

 「体幹が弱いとずっと思っていましたから。これだけずっと(トレーナーに)ついていただいて、細かくできる時間はあまりないですから」

 今や球界屈指の投手となった前田健だが、さらなるレベルアップを目指して師事しているのが、中里トレーナーだ。競泳日本代表指導経験があり、ロンドン五輪銅メダリスト・寺川綾(28)、松田丈志(28)らの体をケアしている、トレーニングのスペシャリストだ。

 「弱点はずばり、下腹と太ももの内側ですね。まだまだ、全然、弱いです」

 昨夏のロンドン五輪で競泳陣がメダルラッシュの快進撃を演じたのは記憶に新しい。その躍進を陰で支えたのが中里トレーナーらスタッフが課した体幹トレーニングだったという。そこで前田健も今回の自主トレから野球界では異例の競泳用の基礎トレーニングを取り入れている。

 この日もランニング、キャッチボールの後はひたすら、体幹を鍛えるメニューが続いた。前田健は顔をしかめながらも、体をいじめ抜いた。陸上トレではあの北島康介と同じメニューをこなしているという。

 「今年は例年より早いペースでつくっています。いつもはまだ投げていないですけど。2月1日にはブルペンで立ち投げをしたい」

 広島のエースであるとともに、今季はWBC日本代表として世界一という大目標を掲げている。3月初旬の1次予選から始まるハードな1年を戦い抜くためにも、メダリストたちと同じ基礎トレーニングが必要だと考えた。

 今月10日にハワイ自主トレを開始してから、WBCで使用されるボールでキャッチボールを行っている。

 「思ったより滑りませんね。キャッチボールの感触は問題ない。持っている変化球も問題ないです」

 この日もカーブ、スライダーなどを交えて感触を確かめた。初めての経験となる世界一を懸けた戦いへ向けて入念な準備をしている。広島のエースから、日本のエースへ。前田健の自覚がうかがえた。