キヨシの「安心」打線がお披露目された。DeNA中畑清監督(59)が8日、沖縄・宜野湾キャンプで元メジャーリーガートリオの“初競演”にご満悦。外国人で初めて日本通算2000本安打へ7本と迫ったアレックス・ラミレス外野手(38)が1軍初合流し、中日から移籍した元2冠のトニ・ブランコ内野手(32)とブルワーズの“暴れん坊”ナイジャー・モーガン外野手(32)のフリー打撃そろい踏みが実現。三者三様、期待通りの打撃に指揮官もニンマリだった。

 “初競演”の締めくくりは、ブランコのバックスクリーンの上を越えていく特大の1発だった。73スイングで4連発を含む14アーチ。調整段階のラミレスも、負けじと3本の柵越えで応戦。モーガンはアーチこそなかったものの、広角に鋭い打球を打ち返す。見入った中畑監督は「去年までにない雰囲気をつくってたねえ。試合前(の練習)にも見せてほしい。フリー打撃を見てもらうのもプロだからね」と、ファンサービス弾指令まで飛び出した。

 ご機嫌なのも無理はない。3つの打撃ケージに並んだいかつい助っ人たちの姿は、さながらメジャー軍団!?

 のようだ。「そう言われてもしょうがないんじゃない?

 それくらい迫力はあったね」と笑ったが、手応えの根拠はある。3人に求める持ち味を、それぞれが見せたこと。モーガンは打率を稼ぐ打撃、ブランコには豪快な1発と得点力、そしてラミレスには勝負強さ。この日の打撃には、その期待を確信に変えてくれるほどのインパクトがあった。

 「主役」が「中畑清」だけ、だった1年前とは明らかに雰囲気は違う。昨年同時期の異様な盛り上がりは、話題を独占した中畑監督のゲキやツッコミがもたらしたもの。良くも悪くも“中畑劇場”だった。元阪神の金本知憲氏には昨年10月の引退試合で「一番目立っているのは監督でした」とまで指摘されていた。

 雰囲気が変わったのは、助っ人の華やかな競演だけではない。昨年はノック中にミスをすれば、いの一番に中畑監督の声がとどろいた。今年はキャプテン石川や内村、筒香らを中心に先輩後輩関係なくダメ出し。ブランコが球をこぼせば、「トニさん!」のヤジが四方八方から飛ぶなど、監督になかなか声を挟ませない。事実、昨年はインフルエンザに倒れたキャンプ2日目にすでにかすれていた指揮官ののどは、まだかれていない。

 チーム内に芽生えた大型補強への、良い意味での意地。そして各自が自覚を持つことで競争意識も高まり、中畑監督の言う「願ったりかなったり」の変化につながっている。前日7日に視察に訪れた阪神中村GMからは「だいぶ変わって戦力アップしている。侮れないね」と警戒されるほどだった。

 勝つことにこだわる意味では、助っ人3人の存在は心強い。中畑監督は「あのテンションが、チームを新しい世界に引きずり込んでくれればいいね。選手主役の世界がどんどん広がって、自分は黙って、頼もしく見守る感じになってくれたらね」。キヨシを本当に安心させられる「安心打線」の完成へのカギは、この変化が握っている。【佐竹実】

 ◆DeNA主な補強

 投手はドラフトで三嶋一輝投手(22=法大)、中日からソーサ、ソト、内野手は白崎浩之内野手(22=駒大)、中日からブランコ、外野手はモーガン、ソフトバンクからトレードで多村が移籍。