<ソフトバンク1-3楽天>◇30日◇ヤフオクドーム

 「我慢」をやめて、楽天星野仙一監督(66)が今季初勝利をものにした。開幕2戦目で早くも打線の組み替えに着手。「2番二塁」でスタメンに抜てきした4年目西田が同点打を放った。一方で、昨季チーム首位打者の銀次はベンチスタート。昨季は少々のミスがあっても我慢して使い続けたが、打撃の調子を落としており先発オーダーから外した。今季は状態の良い選手を使う「競争」を前面に打ち出した。

 試合前の三塁側ベンチ前。銀次はフリー打撃の順番が書かれたホワイトボードに目をやると、無言で守備練習に向かった。ビジターでは、スタメン選手から打撃練習を行う。銀次の順番は控え選手が入る最後のグループだった。前日の開幕戦では「5番一塁」に入るも、4打席凡退。早くもスタメン落ちした。

 代わって抜てきされたのは、4年目の西田だった。その西田が0-1の3回1死一、二塁でソフトバンク山田から同点打。「貢献できてよかった」と笑ったが、ホッともしていた。「結果を求めすぎると気負ってしまうけど(その気持ちが)ないと言えばウソ」。逆転勝利につながる一打に、星野監督は「良い仕事をした。明日も使うよ」と、スタメン継続を宣言した。

 首脳陣で話し合い、最後は星野監督が銀次を外すことを決めた。田代打撃コーチは「銀次はレギュラーを守るのじゃなくもう1度ハングリーさを持って」と注文した。鈴木内野守備走塁コーチは「銀次でも外される。周りが危機感を持つ」。決断は、監督が采配原理を変えたことを意味する。昨季は「我慢」。銀次の非凡な打撃センスに目を付け、守備や走塁には目をつぶった。13失策はリーグワースト6位。それでも「規定打席、打たせたい」と使い続け、打率2割8分を残させた。今季は違う。「銀次はオープン戦終盤からずっと悪い。まずは勝たないと。そのメンバーを組んだ」。

 実は、予告もしていた。開幕2日前の27日、福岡市内の焼き肉店での決起集会。ビールを控える銀次に、星野監督は「ベンチだから気にせず飲めよ」と冗談を飛ばした。「銀次でも、調子を落とすと外される。そうなったのがうれしい」と言った。そして「代わりが良い仕事をする。競争が生まれる。いいじゃない。うかうかしとったらベンチや」とニヤリ。西田がいる。ベテラン高須も控える。我慢をやめて1勝目。就任3年目で、確実に手駒が増えた成果だった。【古川真弥】