<阪神5-6広島>◇29日◇甲子園

 ミス、ミス、ミス…。今季最多4万6108人で埋まった甲子園が虎党のタメ息に包まれた。9回、広島菊池が自称「通天閣打法」で放った右中間の飛球を福留と大和がお見合い。ピンチを広げ、鉄壁AFKリレーを締めてきた久保が最後には逆転を許した。昨年“2ラン振り逃げ”をかまされた虎の天敵・菊池に活躍され、悔しすぎる1敗だ。

 風は…虎に吹かなかった。阪神が手にしかけていた連勝と、約1年ぶりとなる「貯金4」をミスミス逃した。自滅のオンパレードに、ダメ押ししたのは広島菊池。昨年7月には、松山で俊足を生かして“2ラン振り逃げ”した2年目の声が弾んだのは、阪神1点リードの9回、1死二塁の場面だった。

 菊池

 神風が吹きましたね。通天閣打法です。打った瞬間は、やっちまったと思いました。

 ミス(1)

 菊池の打球は右中間へ高々と上がった。右翼福留と中堅大和が落下地点に入るが、福留の動きがぎこちない。後退そして前進したが、カバーに回っていた大和との間に落ちた。福留が「あれは俺がいってやらないと」と悔やめば、大和も「積極的にいけば…ぶつかってでも捕りにいかないと」と痛恨のお見合い。2死が一転、1死二、三塁の大ピンチとなってしまった。

 ミス(2)

 菊池の二塁打のあと丸を敬遠し、守りやすい満塁にした。ここで、久保は広瀬を注文通りにゴロに打ち取る。三遊間寄りの球足は速く、併殺で試合終了と思われたが…この回から守備固めに入っていた三塁坂がはじいた。またまた痛恨の適時失策。坂は「しっかり捕ってホームにという意識でした。チームに申し訳ない」と唇をかんだ。

 9回だけじゃなかった。2回に5本の単打で4点を奪って逆転したが、6回にもミス絡みで同点にされていた。

 ミス(3)

 疲れの見え始めた秋山が、2死一、二塁から松山に右前打を打たれた。ここで右翼福留が好判断。本塁へ送球する体勢から素早く二塁ベースの鳥谷へボールを送った。オーバーランしていた広瀬を追って三塁手前でタッチ。ところが鳥谷のグラブから白球が落ちた。またまたまた痛恨のポロリに「後ろ足に当たってしまった」。1点で収まるはずが、直後に梵に2点適時二塁打を浴びた。

 和田監督

 ホームやからねえ。(福留と大和は)どちらも捕れるだけに、譲り合ってしまったね。あそこ(鳥谷の落球)もそうだし、最後も捕ったらゲッツーというところで…。ホームグラウンドやからなあ。

 スコアボード上の旗は、左翼方向へちぎれんばかりだった。これだけ自滅すれば、聖地の浜風もそっぽを向く。菊池は1回には左翼席へ先制本塁打を放ち「あれこそ神風です」と風への感謝を繰り返した。阪神戦14打数6安打で打率4割2分9厘、新たな天敵となるのか。粘投の秋山の白星を消し、AFK神話は崩れ、巨人追撃ムードもしぼんだ。ゴールデンウイークの甲子園が、ため息とヤジに包まれた。【近間康隆】

 ◆通天閣打法

 人気野球漫画「ドカベン」で、主人公山田太郎のライバルとして登場する通天閣高校のエース、坂田三吉が得意とする打法。極端なアッパースイングで球をすくい上げ、とてつもない高さに打ち上げる。打球は落ちるに従って大きくスライスし、相手の落球を誘う。