<DeNA12-10巨人>◇10日◇横浜

 ミスターが“キヨシ版メークドラマ”に酔いしれた。巨人終身名誉監督の長嶋茂雄氏(77)はDeNA-巨人戦を観戦に訪れた。中畑監督への激励が目的で試合前には「今日は一つやってみろ!」と今季巨人戦で5戦全敗だった愛弟子にハッパをかけていた。そのゲキに応えた中畑DeNAに対し「すごいね~。すごい試合をしたね。ナイスゲームだった」と興奮気味。巨人の終身名誉監督が立場を超えて、DeNAの戦いに心が熱くなっていた。

 数々の奇跡を演じたミスターですら予想しなかった試合展開だった。DeNAが7点のビハインドを負った7回表終了時。1度は帰宅の準備を始めた。関係者が車のエンジンをかけ、球場の玄関前には長嶋氏のコメントを待つ報道陣も集まった。だがその裏にDeNAが6得点の猛追撃を展開。これで帰宅を取りやめ、再び腰を下ろした。結局、中畑監督が出迎えられないほど予定より早く到着した午後5時15分から4時間以上も球場に滞在。そして最後まで観戦を続けてサヨナラ劇の瞬間に立ち会った。

 中畑監督は試合前に長嶋氏のゲキを受け「立場上、どう捉えていいか分からないけど、いい試合がしたいね」と約束していた。誓い通りに最後まで、諦めずにタクトを振った。その姿を見たミスターの称賛は最後まで続いた。采配について聞かれ「頑張っていたね、今日は。見事な試合だった」。敵も味方もない。愛する野球の魅力を存分に伝えた相手をたたえるだけだった。【広重竜太郎】