<巨人5-5オリックス>◇26日◇東京ドーム

 巨人原辰徳監督(54)が、非情采配でチームを引き締めた。2回表の守備から、チームの枢軸の1人とする村田修一内野手(32)をベンチに下げた。「心技体において準備不足」と厳しい評価。試合は控え捕手の井野以外を除く全員が出場する総力戦の末に引き分け。今後に向けて無駄にはしたくない一戦となった。

 2回の表の守備に就くはずの村田の姿がなかった。三塁に向かったのは、一塁を守っていたロペス。一塁にはベンチにいた小笠原が入った。場内のアナウンスが、村田と小笠原が交代することを告げると、2種類のトーンのどよめきが起こった。小笠原の出場を喜ぶファンと、村田の交代に驚く観衆のものだった。

 1回表2死走者なし。バルディリスのゴロを処理しようと前進した村田は、捕球ミス。その走者に先制のホームインを許す結果になった。さらにその裏、逆転に成功し2死一、二塁でまわってきた打席では、高めのボール球を追いかけて3球三振。それが、この日の村田のすべてだった。

 交代の理由を問われた原監督は厳しかった。「心技体ともに準備できていないという判断のもと、そういう用兵になりました。準備不足と判断しました」。チームの枢軸だと考えているからこそ、物足りなく感じた部分だった。

 昨年も同じようなことがあった。9月7日のヤクルト戦(神宮)で、2回の守備から交代を命じた。屈辱的とも言える交代に翌日、村田は頭を丸刈りにして現れた。気持ちを入れ替えて、優勝への原動力となる契機にもなった。

 勝ちきれなかった試合。指揮官は村田だけにとどまらず、主力の奮起を促した。「ガッツ(小笠原)もいい場面で、なんとかアピールしてもらいたい。長野も、もう少し工夫がほしい。技術がないなら、技術以外の部分で打つという策を練ってくれれば」。この日の試合を転機にしてほしい気持ちが、采配や言葉になった。

 球場を去る村田は「何も言われてはいません。体調に問題もありません」とだけ話した。普段、結果を出せなくても、きちんと話すのが村田。口数の少なさが、交代がこたえていることを推測させた。屈辱をバネにできれば、原監督の厳しいタクトも、功を奏したことになる。【竹内智信】