<日本ハム1-6阪神>◇12日◇札幌ドーム

 いやあ飛ぶねえ。ここ3戦でサヨナラ弾2発の絶好調の阪神4番マット・マートン外野手(31)がまたまたアーチだ。3回で主導権をがっちり握り、5連勝を決定づける7号3ラン。札幌ドームでの初アーチを、左腕吉川から右翼ポール際に打ち返す特大弾で飾った。飛ぶ鳥じゃなく飛ぶ巨人を落とした首位の座をがっちりキープ。交流戦Vの可能性もつなぎ、マートンで飛んで回って回る夢想花や!

 甲子園から北国に移っても、マートン劇場には続編があった。1点リードの3回1死一、二塁。日本ハム吉川の外角高め142キロ直球をコンパクトにとらえた。広い札幌ドームをモノともせず、100メートル先にある右翼ポール際のフェンス5・7メートルを越す。“新”統一球の恩恵?

 も受け、2戦連発となる7号3ランで首位の座を守った。

 「鳥谷が早い段階で先制点を取ってくれて、スタンリッジもいいピッチングをしていた。なんとか僕も貢献したかったんだ」

 ここ3戦でサヨナラ弾2発。神懸かった大暴れは止まらない。これで5連勝で今季最多の貯金数を13まで伸ばした。ソフトバンク摂津にロッテ唐川、オリックス金子に西武牧田、昨季のパ・リーグMVP左腕までも打ち砕いた。次々にパのエース級を飲み込んでいく猛虎打線。中でも4番マートンの存在感は抜群だ。

 日々、おでこに1本の赤い線が刻まれている。原因はヘルメット。ピッタリサイズを超越し、キツキツの大きさを好む。打撃の際、少しでもヘルメットが揺れ動くのが許せないらしい。結果、おでこに食い込んだ跡が残り「これは仕方がないんだよ」と照れ笑い。繊細な感覚の持ち主なのだ。

 試合ではバッターボックスの捕手側に立つが、練習中のフリー打撃では数10センチ単位で投手寄りに立つこともある。速球投手対策ではない。「足場が悪いと、きちんとスイングできないからね」。先に打ち込んだ打者が開けた穴に邪魔されぬよう、細心の注意を払う。そんな男が、ボールの違いを見抜けないはずがない。

 「もう皆さんも分かっていたでしょ?

 2010年と11、12年では数字が明らかに違う。この2年と今年も明らかに違うんだから」

 前日11日、「飛ばない」統一球に今季から微調整が加えられ、飛びやすくなっていたことをNPBが認めた。昨季5本だった本塁打数は今季59試合ですでに「7」。それでも今季の口癖は「僕はホームランバッターじゃない」だ。この日の1発もミートに徹して押し込み、右手を離さずフォロースルーした結果。長打を狙って大振りした昨季までの姿はない。「ホームランが出ると、力が入ってフォームを崩してしまうからね」。安打製造機はもう、自らの長所を忘れたりしない。

 自身初の札幌弾。チームの札幌連敗を4で止めた。「明日の夜はカニを食べるつもりなんだ」とニッコリ。もちろん、その前にもう1度、ハムを食べ尽くすつもりだ。【佐井陽介】

 ▼阪神マートンが3回に7号3ラン。札幌ドームで自身初、日本ハム戦でも初アーチとなった。交流戦では8本目のアーチで、これで本塁打がないのは楽天1球団だけになった。