ビッグルーキーだからこその異例シーンだ。虎の総帥・坂井オーナーが弾丸視察で訪れたKスタ宮城で、藤浪晋太郎投手(19)を直ゲキだ!

 連敗を喫し、巨人に1・5ゲーム差と広げられただけに大事な一戦。楽天田中と日本のエースを相手に、藤浪が今日16日、勝負のマウンドを迎える。

 異例のシーンが杜(もり)の都で繰り広げられた。Kスタ宮城での試合前。ベンチ前で投手陣練習が終わるのを待ち構えていたのは、なんと坂井オーナーだ。そこに藤浪が外野から戻ってきて、2ショットが実現した。虎の総帥が差し出す手を、藤浪も両手で包み込んだ。本拠地・甲子園でもグラウンドレベルで選手を激励するのは珍しいが、敵地での一幕。しかも、坂井オーナーは日帰りでの“弾丸視察”。「頑張ってくれ」-。ひと言に込められた重みを、藤浪はしっかりと受け止めた。チームは勝っているが、自身はここ2試合勝利なし。誰よりも勝利の2文字を渇望している。

 藤浪

 そろそろというより、毎回勝ちたい。勝ちたくないと思ってマウンドに上がるピッチャーはいないと思います。勝てるように頑張りたいです。

 坂井オーナーの直ゲキは時間を追うごとに重みを増していった。御前試合で打線がふるわず、エース能見を立てた試合で惜敗。今季7度目の1点差負けで星野楽天に今季3連敗。昨季交流戦からは4連敗を喫した。パ本拠地の球場視察が主な目的のオーナーだったが、試合後は報道陣に言葉を残さず球場を去った。

 準備は万端だ。ブルペン投球などを行い調整するだけでは終わらなかった。実際に投げるマウンドにも立ち、感触を確かめた。「どちらかといえば低い。実際にバッターが立たないとわからないんで、なんとも言えませんが」。初の舞台に繊細になるのも無理はない。立ちはだかる敵は大きい。エース田中が楽天先発。1球が勝敗に直結するケースも十分に考えられる。「厳しい試合になると思いますが、しっかり粘りたい。自分の投球をするだけ」と冷静に話していたルーキーの真価が問われるときが来た。

 この日、球宴ファン投票でセ先発投手部門の1位を争う広島前田健が敗れた。投票締め切り日にも重なるマウンドで歴史的な1勝を挙げればインパクトは大きい。何より巨人と1・5ゲーム差とされたチームにとって大事な一戦。交流戦を白星フィニッシュするのか、勢いを取り戻してきた宿命のライバル球団にズルズルと差を広げられてしまうのか、分岐点だ。ここ2試合では自らの登板後に打線が奮起して黒星を消してくれた。恩返しの好投で、湿り気味の打線を救ってみせる。

 総帥も、虎党も、みんなが期待する19歳が、日本のエースに投げ勝ち、笑って交流戦を締めくくる。【山本大地】