<日本ハム3-2広島>◇16日◇札幌ドーム

 勝利の先に待っていたのは、熱のこもった言葉だった。日本ハム武田勝投手(34)は、栗山監督にギュッと抱き寄せられ、耳元でささやかれた。「期待に応えてくれてありがとう」。指揮官にとって記念すべき通算100勝目を彩る、大役を全うした。「これからも監督のために1勝1勝積み上げていきたい」。苦難を歩んできた左腕にとっても、格別な1勝となった。

 粘投が実を結んだ。6回降板まで3者凡退に抑えたのは2回のみ。それでも、1失点で乗り切った。「何とか最少失点で切り抜けられて良かった」。今季はプロ7年目で初めて開幕投手の座が回ってきた。ダルビッシュが抜けた昨季。適任だったが「我慢してくれ」と言い渡され斎藤に譲る形になった。今季は晴れのマウンドを託された。その開幕戦は左ふくらはぎ筋挫傷で途中降板し、期待を裏切っていた。

 それから約1カ月の離脱。復帰後は新たに超音波治療を取り入れ、練習後や遠征先でも最低5分以上は両脚をケアする時間をつくった。プライベートでも歩く距離などを考えて、スニーカーの種類にもこだわるようになった。陰でコツコツと積んできた努力のたまものが、この日の1勝につながった。偶然巡ってきた監督のメモリアルデーで、やっと報いた。長かった「2番手」の肩書をぬぐい去らせてくれた指揮官へ-。節目の白星だけではなく、真のエースとしての姿もプレゼントした。【田中彩友美】