<広島3-2巨人>◇27日◇マツダスタジアム

 巨人阿部慎之助捕手(34)が節目の20発を放った。広島戦の初回、バリントンから右中間へ豪快な2ランを運んだ。7年連続9度目の20号本塁打。7年連続は長嶋を超えるチーム単独4位で、9度目は松井に並ぶ4位タイの記録となった。試合は逆転負けで空砲となったが、ホームランアーチストとしての歩みは続く。

 偉大なるOBの足跡をたどるのに、ふさわしい一撃だった。初回2死一塁。バリントンの真ん中に入った145キロのツーシームを高々と打ち上げた。広島外野陣に追うことを諦めさせるような、大きな弧を描いた。「最後に甘く入ってきたボールをしっかりと、とらえられた」。少ない失投をミスショットしなかった。

 長距離砲の1つの目安となる20号の数字。6年連続で記録したミスターを7年連続で越え、日本球界で通算9度を記録したゴジラに肩を並べた。だが記録は敗戦後の阿部には一切、関心を持てなかった。「まぁ、いいべ、そこは。それよりも今日は宮国を何とか勝たせたかった」。猛省したのは6回にエルドレッドに浴びた同点2ラン。1、2打席とも三振を奪ったスライダーではなくカーブを要求したことに「スライダーで良かった。オレのミス。申し訳ない」と悔いた。

 捕手、主将としては反省が残る一戦。だが打者としては確かな成長を実感できる一戦だった。セ・リーグ屈指の助っ人右腕バリントンとは、この試合前まで通算19打数5安打2本塁打。数字以上に強烈に印象に残る球種があった。昨シーズン中、「140キロ後半のツーシームなんてどうやって打つんだ?」と漏らした。当時はスタンドインさせるイメージが湧かなかった。実際に過去の2本は直球とスライダーをとらえたもの。その難攻不落と感じていたツーシームを甘く入ったとはいえ、仕留めた。

 阿部の進化は球界中が認めていることが数字で表れている。すでに球宴はファン投票で選出。試合前には選手間投票でも783選手中589票の最多投票を集めてダブル選出されたことが発表された。75%の圧倒的支持率に「なんかもらえるの?」と、おどけたが「ありがたいですね」と感謝した。これからも一目置かれるアーチを球界トップの打者として描き続ける。【広重竜太郎】

 ▼阿部が7年連続9度目の20号。巨人で20本塁打以上を9度は王19度、長嶋13度、原12度、松井9度に次いで5人目。7年連続は62~80年王の19年、81~92年原の12年、94~02年松井の9年に次ぎ4人目で、68~73年長嶋の6年連続を抜いた。捕手で20本塁打以上が最も多いのは、南海時代の野村が57~73、75年にマークした17年連続18度。次いで阪神時代の田淵が69、70、72~78年マークした7年連続9度で、阿部が捕手としては通算、連続ともに田淵に並び2位となった(主にDHの西武時代含めると田淵は9年連続13度)。