<阪神0-3広島>◇30日◇甲子園
広島野村祐輔投手(24)が、プロ入り初の甲子園のマウンドで笑った。8回3安打無失点に抑え9勝目。昨季の自己最多に並び、2桁勝利にも王手をかけた。打っては適時打を放つワンマンショー。広陵(広島)時代の07年夏の甲子園大会決勝で佐賀北に逆転満塁弾を浴び敗れて以来のマウンドで、成長した姿を披露した。
悲劇のマウンドを、自分の力でワンマンショーの舞台に変えた。プロ入り初の甲子園のマウンドで、野村が輝いた。阪神打線を8回3安打無失点。低めに球を集め、速球をコーナーに投げ込み、スライダーやカーブなど多彩な変化球を駆使して相手につけいるスキを与えなかった。2回には自ら適時打も放ち、新人だった昨季と並ぶ9勝目。2桁勝利に王手をかけた。
野村は「うまく投げられた。相手が1つ順位が上のチームですし、負けられないというか、向かっていく気持ちでした。連敗も止めたかったので、よかったです。ヒットはたまたまですけど」と喜んだ。
野村にとって、甲子園のマウンドには悔しい思い出がしみこんでいる。広陵のエースとして臨んだ07年夏の甲子園大会決勝の佐賀北戦。4点リードの8回、1死満塁のピンチにきわどいコースをボールと判定され押し出し四球。「冷静でいようと思いましたが、あんな雰囲気は初めてでそれに流された感じ」と、ショックがさめやらないうちに、次打者に逆転満塁本塁打を浴び、涙をのんだ。今でも甲子園のテレビ中継などを見ると思い出すという、その因縁の試合以来の甲子園だった。
だが「あのとき以来とは知ってましたが、高校野球とプロ野球は違いますから」と過去は顧みない。当時のVTRも見たことがない。マウンドの感触も「思い出さないです」と笑う。
だが高校時代に「勝ちきれなかった」という悔しい気持ちをもとに、明大へ進学して体を鍛え、技術を磨いてプロに挑んだ。高校時代に悪夢を味わった8回も、この日は3者凡退に切った。そこには、6年前とは違う、大きく成長した野村の姿があった。
野村監督も「連敗してからの甲子園で、独特の雰囲気の中、よく投げてくれた。チームを勇気づける投球だった」と称賛した。悲劇の右腕は「勝ちきれる」投手となって、聖地に戻ってきた。【高垣誠】
◆野村の07年夏の甲子園
広陵(広島)のエースとして出場。チームメートには土生や上本崇(いずれも現広島)がいた。初戦で駒大苫小牧(南北海道)を破ると、東福岡(福岡)や常葉学園菊川(静岡)などを撃破し佐賀北(佐賀)と決勝で対戦。広陵が2回に2点を先制し、7回にも野村の適時打で2点を追加して4点をリード。野村は7回まで1安打に封じていたが、8回に1死満塁のピンチを迎える。ここで佐賀北・井手に対しカウント3-1から投じた外角への球がボールの判定で押し出し。続く副島に逆転満塁本塁打を浴び、5-4で敗れた。広陵・中井監督は試合後「あの1球は完璧にストライク」と判定に怒りをあらわにした。



