<阪神2-1広島>◇8月31日◇甲子園

 虎の第94代4番が快音を残した。鳥谷敬内野手(32)が1回2死二塁での1打席目。4番初安打となる先制の左前タイムリーを放った。初4番だった前夜は4打席で3打数無安打1四球。積極打法で4番としてきっちり仕事を果たし、チームの連敗を4で止めた。

 鳥谷が自らのスタイルで4番を全うした。初回2死二塁、打席がまわってきた。前日から4番打者が“指定席”となった。プロで初めて座るイス。第94代という称号も本人には無関係のようだ。初球、144キロストレートが外寄りにきた。迷いなく振り切った。

 「1、2番がいい流れでチャンスをつくってくれたので、積極的に打とうと考えて、打席に立ちました」

 痛烈な打球が左前に弾んだ。4番として初安打がタイムリーとなった。雨に加えて強い風。悪天候の中、貴重な先制点だった。

 巨人に敵地で3連敗したショックを振り払うかのように、首脳陣は前日30日の広島戦から打順を入れ替えた。3番マートン、4番鳥谷-。和田監督が以前から胸に秘めていたというプランをここで実行した。

 「鳥谷の能力からすればもっとできるんじゃないか。つなぎ役に徹するところがあるから。返す方にね」

 結果は1点も奪えずに敗れた。だが、試合後、和田監督は「4番・鳥谷」の意図をこう説明し、今後の継続を宣言した。そして、これに対する鳥谷のコメントはこうだった。

 「急に大きいのが打てるわけではないので」

 4番のイスに座ったからと言って、変身するわけではない。指揮官の起用に自分らしさで応えるという姿勢を示した。この日、3打席目まですべて初球を打ったことが象徴的だった。

 「3打席とも甘いボールがきたので」

 好球必打は野球の原則だが、早いカウントからはバットが出ないこともある。凡退したら…。その心理が邪魔をする。ただ、鳥谷はためらいなくバットを振る。今季、第1ストライクを打った際の成績は前日まで打率3割2分4厘、4本塁打、21打点。シーズン通算の2割7分、6本塁打、45打点を大きく上回る。初球打ちをさらりと振り返る姿に強い意志がにじんだ。

 「初回に4番が打ったのがね。2点目も、4番打者らしい進塁打。返そうとしながら(走者を)進める強さが出ていた」

 和田監督も新4番をたたえた。4回無死二塁では強烈な一塁ゴロで二塁走者を三塁に進めた。これが新井貴の決勝犠飛へつながった。指揮官には自分で決めるという意志が伝わってきたという。鳥谷が、鳥谷らしい4番像を表現し、チームを勝利に導いた。【鈴木忠平】