<巨人3-3ヤクルト>◇3日◇富山

 ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(29)は3試合連続で不発だった。巨人内海に4打数1安打と力負け。9回の好機には敬遠四球で、代走を送られて退いた。日本プロ野球記録のシーズン最多55本塁打まで、マジック3のまま足踏み。36年前、巨人王が世界記録の通算756号を放った“ホームラン記念日”を1発で飾ることはできなかった。

 バレンティンの放った大飛球は惜しくも左中間フェンスに届かず、二塁打だった。内海とは望み通り真っ向からぶつかり合ったが、6回の1安打のみ。内海が降板後、1点リードの9回2死二塁では、当然のように敬遠で歩かされた。真剣勝負の余韻が薄れ、打席の途中で思わず苦笑いした。3戦連続で不発。試合後の質問にも言葉は少なく、もどかしそうな表情で球場を後にした。

 この日は“ホームラン記念日”だった。1977年9月3日、巨人王がヤクルト戦(後楽園)で通算756号を放ち、ハンク・アーロンの世界記録を破った日として知られる。その王が持つシーズン最多55本塁打まであと3本。挑戦者の立場になり「王さんのことは日本に来てから、素晴らしいホームランキングがいると知った。リスペクトしている。上回ることができたら光栄だよ」と話した。

 一方、ローズ、カブレラといった外国人選手が、異国の地で55発の壁にはね返されてきた歴史がある。「ここは日本。日本の選手が持っている記録を破られたくない気持ちは分かる。記録が近い実感はあるけど、同時に、まだまだ遠いような感じもしている」と複雑な心境を吐露した。これから本数を積み重ねる難しさを、日に日に感じていることも確かだ。

 打っても打てなくても、注目されることに戸惑いはある。「2週間くらい前から報道陣が増えて、取り上げられる機会が多くなった。こういう経験がないのでビックリしている」と心境を明かした。チームは最下位だが、富山には首位巨人に負けないほど多くの取材陣が駆けつけた。練習時からカメラに追いかけ回される日々には慣れないが「1打席1打席、これが日本で最後の打席になると思って集中していきたい」。マジック3。まだ残り27試合ある。【柴田猛夫】

 ◆9月3日の756号

 1977年(昭52)9月3日、王貞治(巨人)がヤクルト戦(後楽園)の3回、鈴木康から通算756号本塁打を右翼席へ放り込んだ。ハンク・アーロンが米大リーグでマークした755号の通算本塁打の世界記録を更新。この年の王は50本塁打を放ち、15度目の本塁打王を獲得した。<56号に迫った外国人選手>

 ◆阪神バース

 「気にしていない。無理にボールを打つと日本シリーズに悪い影響が出るから、よく見極めにいったんだ」(85年10月24日、優勝決定後の最終戦。王監督率いる巨人戦で55号に挑むも単打1本に4四球。3冠王に出塁率1位を加えた)

 ◆近鉄ローズ

 「記録をそのまま残したいのなら、それでいいです」(01年9月30日、王監督率いるダイエー戦で56号に挑む。梨田監督に1番起用されたが、“ボール攻め”に4打席無安打2四球。目を潤ませる)

 ◆西武カブレラ

 「彼らはプロフェッショナルじゃない。(王監督の)目の前で記録を破られたくない。だからピッチャーはストライクを投げてこない。なぜ勝負させることを指導しないのか信じられない」(02年10月5日、王監督率いるダイエー戦で56号に挑むも“ボール攻め”で5打席1安打3四死球)