<ヤクルト2-3阪神>◇4日◇神宮

 阪神ランディ・メッセンジャー投手(32)が今オフ、米大リーグに流出する可能性が高いことが4日、明らかになった。ヤクルト戦は13勝目こそ逃したが、奪三振はリーグトップの183個に伸ばした。今季はメジャーのスカウトが登板試合の視察を重ね、ツインズなどが熱視線を送っていた。3年10億円前後の大型契約を提示する球団も出る模様で、阪神も慰留に全力を注ぐ。

 来日4年間で磨いた投球術を惜しみなく披露した。メッセンジャーが今季限りでタテジマのユニホームを脱ぐ可能性が強まり、リーグ戦最終登板でも全力を尽くした。6回にはバレンティンに60号同点2ランを右翼に浴びたが立て直す。7回は変化球を駆使して3者凡退。この日は7回2失点で降板した。7三振を奪い、今季通算183奪三振。阪神の助っ人では史上初の奪三振タイトルもほぼ確定した。

 好投すればするほど、阪神のジレンマは深まる。3年連続2桁勝利を挙げた助っ人をメジャーのスカウト陣が見逃すはずがない。今季は2年契約の最終年で、開幕当初から複数のメジャー球団がネット裏で投球を見守ってきた。あるスカウトが「試合終盤でも150キロ台の直球を投げる。制球が良くなったのも大きな魅力」と話すように評価は高い。かつて広島に在籍した右腕コルビー・ルイス(現レンジャーズ)がメジャーに復帰して活躍した例もあり、メッセンジャーの力量にも注目が集まった。

 先発陣が手薄なツインズやパドレス、マリナーズなどは補強に本腰を入れている。阪神にとっては欠かせない戦力だが、メジャー球団の触手に旗色は悪い。ある球団関係者は「メジャーは3年10億円くらいのオファーを出すようだ。彼がメジャーを希望するなら、引き留めは難しい」と説明する。シーズン終了後にもメッセンジャーを全力で慰留する方針だが、資金力が潤沢なメジャー球団との争奪戦には限界もあり、流出を現実として受け止める。阪神は来季の先発陣が弱体化する事態を想定している。

 24日のドラフトに向けて当初、1位候補として桐光学園・松井裕樹投手(17)など将来性豊かな逸材をリストアップしていたが、ここにきて1年目から1軍で活躍できる即戦力投手に方針転換。JR東日本・吉田一将投手(24=日大)を筆頭候補に九州共立大・大瀬良大地投手(22=長崎日大)らが上位に名を連ねる。「メッセ退団」を予測した動きで、今後はFAなどでの先発補強も模索する。

 米球界復帰が濃厚な状況だが、いまはチームのために全力を注ぐ。CSファーストステージ広島戦の初戦先発も予想される。日本での4年で制球力はアップし、変化球とのコンビネーションに磨きがかかった。まさに有終の美。プレーオフで花道を飾り、堂々と米球界に再チャレンジする。