<セCSファイナルステージ:巨人3-0広島>◇第2戦◇17日◇東京ドーム

 巨人寺内崇幸内野手(30)はマエケン攻略の狙いを1点に絞った。3回1死一、二塁。「前回の対戦も低めの球に三振した。高めの球を打つしかない。スライダーを何とか打たないと」。カウント1ボール2ストライクと追い込まれても揺るがない。「当てにいって併殺打になるよりは三振の方がいい。割り切って初球から待ち方を変えずに思いきりたたく」と、狙っていた1球が来た。外角高めのスライダー。プロ7年で通算4本塁打の伏兵が放った打球は左翼席最前列に飛び込んだ。

 球界屈指の投手である前田健に、スキはほぼない。だが小さなほころびを一丸となってたたけば、大きな風穴となる。4戦3敗、防御率0・96に封じられた今季の対戦から1つの傾向をあぶり出した。右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップが勝負球になることが多かった。CSファーストステージの阪神戦でも同様の傾向が出ていた。ほとんどの打者が徹底して、傾向通りに狙った。

 5回までの全75球でスライダーは30球あった。見逃しストライクは1球もなし。各打者はボールとなった9球以外は振っていった。1、2打席と凡退した村田は「スライダーのイメージでいた」と振り返る。寺内も3球三振の1打席目は2球を強振し、3ランの場面も1ボールからのスライダーをファウルにして感覚をつかんだ。

 各打者が徹底してスライダーを狙い打つ“捨て石”となって9個のアウトを重ねた。唯一攻略した寺内の1本が値千金となった。力量のある打線が戦略を遂行し、マエケン攻略の任務を成功させた。【広重竜太郎】