胸中は白紙!

 昨季取得した海外FA権を保有する阪神鳥谷敬内野手(32)が残留だけでなくメジャー挑戦の可能性も選択肢に入れていることが20日、分かった。昨オフはメジャー挑戦も視野に入れて悩み抜いた末、権利を行使せず単年契約で残留。今オフも再び熟考に入ったキャプテンの決断に注目が集まる。

 虎のキャプテンはまだ、選択肢を絞っていなかった。昨季取得した海外FA権を保有する。阪神残留を予想する声が多く聞こえてくる中、鳥谷は冷静に熟考をスタートさせていた。

 「権利を持っているのでしっかり考えたい。時間をかけて、これからゆっくり考えたいと思っている」

 昨オフは期限ギリギリまで熟慮を重ね、「虎でV奪回」という結論にたどり着いた。一方で権利を行使せず、単年契約で合意。今オフに向け、メジャー挑戦の道を残していた。

 チームに対する感謝、愛着があるのは当然。2位に終わっただけに、V奪回にかける思いも強い。同時に、早大時代から長年に渡りメジャーへの憧れを持っているのも事実。米国行きの権利を持っている立場として、残留だけでなくメジャー挑戦も選択肢に残している模様だ。

 もちろん現状は理解している。近年、メジャーに移った日本人内野手は苦戦続き。西岡は昨オフ、ツインズから阪神に居場所を移し、今季はアスレチックス1年目の中島がメジャー昇格を果たせず。ジャイアンツ田中は外野手転向を余儀なくされ、ブルージェイズ川崎も成功とは言い難い数字に終わっている。

 逆風は強く、日本人内野手のメジャー契約自体が難しい時勢。仮にメジャー挑戦する場合、推定年俸2億8000万円からの減額が予想される。とはいえ夢への熱意と比べれば、金額面のマイナス要素は大きな支障とは言えない。

 今季は2年連続の144試合フルイニング出場を果たし、黒土グラウンドの甲子園でわずか4失策。1322試合連続出場中の鉄人ぶりは球界屈指だ。リーグ最多104四球で、メジャー球団が重視する出塁率はリーグ4位の4割2厘。本職の遊撃以外に二塁、三塁も守れる魅力も持つ。昨オフはアスレチックスなどが興味を持っていた模様。今オフもメジャー側が触手を伸ばす可能性は十分ある。

 WBC代表メンバーとして米国アリゾナで練習試合を戦った3月、あるナ・リーグ球団スカウトは鳥谷について「なかなかいい動きだ」と評価。別の同リーグ球団スカウトは「鳥谷の名前は聞いたことがある。ビデオも見たが、実際に見た感じ、それなりにプレーできるのでは、という感じだ」と話していた。メジャー関係者によれば、オリオールズ、ドジャース、レイズなどが今オフの内野手獲得に積極的という。

 阪神は今オフも全力で慰留する方針で、今後、本格的な交渉がスタートする。14年V奪回へ、絶対に欠かすことができないピース。鳥谷の動向に注目が集まる。

 ◆鳥谷のFA権を巡る動き

 プロ8年目の11年9月3日に国内FA権を取得。球団は取得日の直前に会談を持ち残留を要請した。同年オフには宣言せずに残留することを表明し、1年契約で更改。12年8月21日に、海外FA権を取得。シーズン中にはインディアンスやツインズなど複数のメジャー球団が視察するなど争奪戦の気配が漂ったが、前年に引き続き宣言をせずチーム残留。単年契約を結んだ。