<コナミ日本シリーズ2013:巨人2-4楽天>◇第5戦◇10月31日◇東京ドーム

 楽天則本昂大投手(22)がド根性の救援登板で、日本シリーズ初白星をマークした。先発辛島の後を引き継ぎ6回から2番手で登板。9回に同点に追いつかれるが、延長10回に勝ち越した2点を守りきった。日本シリーズの新人勝利は昨年の巨人高木京以来、14人目。

 延長10回、最後のマウンドに向かう背中で、岡島の声がした。「藤田さんの分まで頑張ろう!」。直前の攻撃で、死球のため途中交代した藤田の悔しさを思うと、則本の両目は熱くなった。「涙が出そうになった」と、アドレナリン全開で5イニング目の投球に突入した。79球目。最後は長野を二飛に仕留めた。雄たけびを上げ、嶋を抱いた。

 ドラマの中心に君臨した。9回、1点差を抑えていれば勝利だった。先頭、代打高橋由の二塁打を起点に1死一、三塁のピンチを招く。7回に本塁打を浴びている村田との勝負。注文通りの投ゴロを打たせたが、グラブに当てたが、収まらない。痛恨の同点。辛島が先発で5回無失点の好投をしていただけに「あれが捕れていれば辛島に勝ちが付いた」と、同学年の白星を消したことを悔やんだ。だが、気持ちを切らさない。「ここをしのげば逆転してくれる」と気迫で2人を抑え、延長戦に持ち込んだ。

 延長10回、先頭打者で打席に立った。続投はベンチの信頼の証し。四球を選び、決勝のホームを踏んだ。

 この日負けの展開ならば、第7戦の先発だった。「勝っていれば6回から則本」が首脳陣のシナリオだった。当初のシナリオに延長戦はなかったが、王手で仙台に帰る。「全力プレーで全員の力を合わせて。ファンの皆さんの力も合わせて、1勝もぎとりたいと思います。後は田中さんが抑えてくれると思う」。背中を追い続けた先輩に、則本は最高の舞台を用意した。【金子航】

 ▼6回からリリーフした則本がシリーズ初勝利。新人の勝利投手は12年<6>戦高木京(巨人)以来で14人、17度目。巨人相手に白星を挙げた新人は56年稲尾(西鉄=3勝)90年潮崎(西武)に次いで3人目だ。56年西鉄は稲尾が3勝、90年西武は潮崎が1勝1Sと、新人投手が活躍して巨人を倒したが、今年の楽天はどうか。また、則本は<1>戦では先発。シリーズで先発と救援の両方で登板した新人は07年吉川(日本ハム)以来10人目。則本のように先発を経験してから救援勝利は<2>戦で先発、<3>、<4>戦で救援勝利の56年稲尾に次いで2人目。