ガッツが移籍の道を選ぶ。巨人小笠原道大内野手(40)が10日、史上最高齢でFA権を行使し、新天地を探す意向を明らかにした。今日11日に、東京・大手町の球団事務所で手続きを取る。この日、川崎市のジャイアンツ球場に顔を見せた小笠原は原辰徳監督(55)やチームメートとあいさつをかわし、会見に臨んだ。14日に公示され、15日から交渉解禁となる。

 ようやく決断を下せた。小笠原は厳しい表情の中に、再出発に向けて踏ん切りをつけた思いを忍ばせた。「最後にもう1度、自分を見つめ直したい。また新しいところで挑戦してみたいという思いで決断しました」。先のことは分からない。今は、交渉解禁となる15日を静かに待つ構えだ。

 9月から球団と重ねてきた話し合いは、なかなかまとまらなかった。自由契約にしてもらうことは可能かと相談もした。しかし、功労者を自由契約にはできないという球団側の判断もあり、なかなか落ち着くところがなかった。

 小笠原にとっても、巨人で現役生活を終えられれば、この上ない幸せだった。なかなか起用機会に恵まれなかった今季、ポツリと話したことがあった。「オレは原監督が好きなんだ。今はチャンスをもらえないことも多いけど、それは自分の実力だと思っている。監督の采配や気配りというのは温かさを感じる」。打てばヒーローになれる場面で起用してくれたことに感謝していた。その思いにこたえたい気持ちでいっぱいだった。

 しかし、来季に向けてチームが動きだし、日本シリーズの40人枠に入れなかった自分が、どういう立場かも分かっていた。そして、まだ燃え尽きていない気持ちを抑えることができなかった。「試合に出たい」。その気持ちが、FAの決断につながった。

 小笠原がFA宣言をすることで、すべてが丸く収まったとも言える。巨人は功労者に戦力外通告をせずに済んだ。FAでもCランクの小笠原には、人的補償も金銭補償も必要ない。トレードなら交換要員や金銭等で獲得に二の足を踏むケースが予想され、他球団から声がかかりやすい環境をつくるという意味では、ベストの選択に努めた。

 原監督からは「ガッツはジャイアンツの功労者だしね。彼の再出発、いい結果が出るといいね」と、エールを送られた。FA権行使時点で満40歳は、93年に中日から巨人に移籍した落合博満氏の39歳を抜いて最高齢となる。小笠原の、未知との戦いが始まる。

 ◆40歳以上のFA宣言

 小笠原は40歳。40歳シーズンでのFA宣言は、93年オフの落合博満(中日→巨人)に並ぶ最年長となる。

 ◆小笠原道大(おがさわら・みちひろ)1973年(昭48)10月25日、千葉県生まれ。暁星国際からNTT関東を経て、96年ドラフト3位で日本ハム入団。2年目までは捕手。06年オフにFAで巨人へ移籍。00、01年最多安打、02、03年首位打者、03年最高出塁率、06年に本塁打、打点の2冠。06、07年MVP。通算打率3割1分1厘は4000打数以上で歴代9位。04年アテネ五輪、06、09年WBCで日本代表。昨年の減俸額3億6000万円は球界史上最高。178センチ、83キロ。右投げ左打ち。家族は夫人と2女。