「セーブ王」は日本も救う。阪神に新加入した呉昇桓(オ・スンファン)投手(31=韓国サムスン)がおとこ気の寄付活動を行う。13日、大阪市内のホテルで入団会見に臨み、東日本大震災の被災地に義援金を贈る考えを明らかにした。過去の来日で目についた神戸などのイルミネーションに、95年に起こった阪神・淡路大震災の鎮魂の意味が込められていると知ったのがきっかけ。韓国球界のスーパースターは、白星だけじゃなく、夢も運んでくる男だ。

 クリスマスムードの関西を歩いて、呉昇桓には気になったことがある。街を彩るイルミネーションが目についた。「大阪の難波を通り過ぎたときも、木に光をつけて飾っていた。イルミネーションというみたいですね」。これまでの来日でも、煌々(こうこう)と夜空を照らす、きらびやかな電飾に目を奪われた。そして神戸ルミナリエ。なぜあれほど明るいのか…。関係者に問わずにいられない。

 「阪神大地震で亡くなった人たちの悲しい気持ちを明るくさせるイベントだと聞きました。津波や地震は自然に起こることだけど、テレビを見ていて良くないことです。被災者に対して自分の給料で寄付したい」

 神戸ルミナリエは95年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の犠牲者を弔い、悼み、復興へと前進するイベントだ。来年から日本でプレーする呉昇桓にとって2年前の大惨事も人ごとではなかった。11年3月11日。東日本を襲った大地震の惨状は韓国でもテレビの衛星中継で映し出された。「オープン戦の時期でした。見た瞬間の衝撃が大きかった。言葉で表現できないくらい」。心意気たっぷりの義援金プランを明かした。

 11年当時、サムスンには門倉健、落合英二投手コーチがいた。門倉は寄付金を入れる箱を持って回り、ナインから寄付を募ったという。呉昇桓にはそんな光景が目に焼きつく。「阪神球団の方たちに話をして阪神タイガースの名前でやろうと思う」。具体的な金額や方法、寄付先などは今後、検討する。

 けじめの儀式を終えた。4日に母国・韓国のソウル市内で契約調印式に臨み、この日は大阪市内のホテルで入団会見を行った。チーム待望の守護神として責任感がにじみ出る。究極の目標はシーズン無敗だ。

 「セーブの多さより、勝っているときに出て失敗しないのが一番大事。失敗を減らすのが第1目標です」

 11年には54試合に登板して47セーブ。シーズンで1度も黒星がなかったのは理想像だろう。「1試合1試合、1球1球が大事。その積み重ねが結果につながった」。韓国歴代最多の277セーブを重ねた「セーブ王」が力投するほど、周囲は救われる。活躍すればするほど人々の心を明るく温かく照らす。【酒井俊作】

 ◆神戸ルミナリエ

 阪神・淡路大震災犠牲者の鎮魂の意を込めるとともに、都市の復興・再生への夢と希望を託し、大震災が起きた95年の12月から毎年開催されている。神戸の中心部である旧外国人居留地及び東遊園地を、光のイルミネーションで飾るイベントで、昨年は延べ340万1000人が訪れた。19回目を迎える今年は5日から16日の12日間行われている。

 ◆東日本大震災・義援金の現状

 日本赤十字社のホームページによれば12日現在で、同社などで3293億3414万652円の募金を受け付けた。震災直後の11年夏は3000億円超で、いまも変わらず国内外から義援金が寄せられている。被災都道県に送金された後、配分委員会で被災者への配分基準を決定し、被災者に届けられる。同社では来年3月31日まで受け付けを延長している。