阪神マット・マートン外野手(32)が29日、関西国際空港着の航空便で来日した。あと54安打でバースを抜き、球団助っ人史上最多安打に到達するM砲は昨年12月中に異例のフリー打撃を行うなど意欲的な調整ぶりを明かした。新外国人マウロ・ゴメス内野手(29=ナショナルズ3A)へのサポート役も望むところ。真の猛虎最強助っ人へ、5年目の勝負に向かう。

 マートンが帰ってきた。昨年10月、帰国の際に「来年どうなるかわからないけど、僕を育ててくれた日本に感謝したい」と意味深な言葉を残した助っ人だったが、推定年俸350万ドル(約3億6750万円)の契約で猛虎5年目を迎えることになった。関西国際空港の到着ロビーに現れると満面の笑みで語った。

 「ついさっき、日本を出たような感覚なんだけどね。新聞を見て、いろいろと情報は知っています。今年もいいチームだと思うからシーズンが楽しみだよ」

 新守護神も、4番候補も補強した。ただ、やはり、猛虎打線の中で強烈な存在感を放つのは安打製造機だ。そのマートンが今季、偉大な先輩を超えようとしている。あと53安打でバース氏の阪神での通算安打に並ぶのだ。

 「それだけ打つためには試合に出ないといけない。試合に出る機会を与えてくれたチームに感謝したい。打つチャンスを与えてもらったんだ」

 83年から88年まで阪神打線をけん引し、85年には日本一に導いた先人は「最強助っ人」と呼ばれている。6年間で通算打率3割3分7厘、202本塁打、486打点は球団史にひときわ輝く。マートンは敬意を払いながらもバース超えへの意欲もうかがわせた。

 「(アメリカでは)特に下半身を重点的に鍛えてきた。エンジンが大事なんだけど、サスペンションも機能しないとね。そういう細かい部分を鍛えてきた。投げてくれる人も見つかったから、12月にはフリー打撃もやってきたよ」

 調整も順調に進んでいるようだ。自宅をテネシー州に移した昨年12月、現地で打撃投手を務めてくれる人物が見つかったという。そこで年内では異例のフリー打撃を行った。一昨年、左太もも裏を痛めたため、今オフも下半身を重点的に鍛えるトレーニングも行ってきており、まさに準備万端といった様子だ。

 打線の構想はまだ見えてこないが、今季は新4番として期待されるゴメスとともにクリーンアップを組む可能性もありそうだ。日本5年目の先輩としてサポート役も買って出た。

 「聞いた話だと、しっかりと打てる選手のようだね。勝利に貢献するためにも彼が成功する手助けをしたい。うまく適応していけるんじゃないかな」

 その表情からはあふれ出る自信がうかがえた。真の最強助っ人となるべく、マートンの5年目は笑顔、笑顔で幕を開けた。【鈴木忠平】