来日初安打を放っても、淡々としていた。楽天ケビン・ユーキリス内野手(34=ヤンキース)が27日、ロッテとの練習試合で2打数2安打。「打ったのは、どちらも直球。野手の間をうまく抜けてくれた」。感想を求めようと集まった報道陣のざわつきと対照的に、静かに答えた。メジャー通算1053安打の男にとって、練習試合の結果に特別な意味はなかった。

 それでも、1打席で相手エースに与えたインパクトは十分だ。2回先頭。成瀬に対し、5球連続で見逃した。ボール、ストライクと交互に見て、迎えた6球目。抜けた直球を中前に運んだ。成瀬は「初対戦で何を打つか分からない。すごく不気味な感じがありました」と打ち明けた。5年連続開幕投手に決まっている成瀬を、オーラで驚かせた。

 最後の1球で決めた。選球眼の良さから「四球のギリシャ神」の異名を持つユーキリスらしかった。「打ちにいこうとして、たまたまフルカウントになっただけ」と言ったが、裏返せば、打てる球を確実に仕留めたということ。日米のストライクゾーンの違いには「気にしない。それより、内容のある打席にすることが大事。結果より、タイミングの取り方、スイング、そしてケガなく調整することだ」。照準は、1カ月後の開幕に定めている。

 所用で来日が今月7日と遅れたが、もうチームにとけ込んだ。那覇から宮崎に移動した24日。野手全員が宮崎市内の飲食店に集まった。ユーキリスは2次会にも参加。宴もたけなわとなり、カラオケのマイクを握った。英語で「ハッピバースデートゥーユー」を歌った。銀次の26歳の誕生日だった。銀次は「まさか、でした」と感激していた。

 実戦3試合目での安打に、星野監督は「気分はいいな。1本じゃない。2本だ。間違わないように」とご満悦。ユーキリスは「楽天がまた優勝できるようにプレーする」と公言する。約束実現を予感させる、初安打だった。【古川真弥】

 ◆ユーキリスの選球眼

 メジャー10年間の通算出塁率は、通算打率2割8分1厘を1割以上も上回る3割8分2厘。最も出塁率が高かった09年の4割1分3厘は、メジャー全30球団の選手中6位の好成績だった。91四球をマークした06年、1打席あたり投手に投げさせた4・42球はリーグ最多。03年にベストセラーとなった「マネー・ボール」では、著書のマイケル・ルイスが「四球のギリシャ神」と命名した。