それはただの練習着ではなく、指揮官からの「手紙」だった。日本ハム栗山英樹監督(52)は、就任1年目の12年からキャンプイン前日に、選手、コーチ、関係者らにオリジナルデザインTシャツをプレゼントしている。今年のテーマは「原点」。同監督がTシャツに込める思い、その発案、制作過程に潜入した。

 言葉で伝えるよりも心に残り、目にするたびに思い出す。それは、栗山監督らしい発想だった。就任1年目のキャンプイン前日。選手、関係者らすべての部屋には、「胴上げのシルエット」をあしらった、オリジナルのTシャツが置いてあった。

 栗山監督

 選手に、ただ気持ちを伝えたいと思った。(受け取った側が)どう思うかは関係ない。メッセージとして、伝わってくれればいいなと。

 その年、デザインは現実になった。リーグ制覇し、栗山監督は宙に舞った。あるスタッフは「Tシャツのまんまだ」とつぶやいた。「優勝」という明確な目標に向かって、選手たちが突き進んだ結果だった。

 片手間に作っているわけではない。シーズンオフに入ると、監督自らがイメージ画のデザインに携わり、何度も打ち合わせを重ねながら、ようやく絵柄が決まる。ここから約3週間をかけてプリント。2月のキャンプインに間に合わせる。

 栗山監督は「ひとりよがり。オレがひとりで勝手にやってるだけ。それについて選手に説明したこともない」と言うが、Tシャツに込められた意味は、しっかりと届いている。宮西は「(キャンプインが近づくと)今年はどんなデザインなんだろうって考えている。いまやなくてはならないものだと思う」と話す。着用するたび、選手たちは監督からのメッセージを再確認し、また同じものを着ることで一体感も生まれる。

 今年のデザインは「草野球場と少年」。テーマは「原点」だ。

 栗山監督

 少年時代、誰もが日が暮れるまで野球で遊んでいた、原点だよね。(最下位になり)もう1度、原点に返らなければいけない。そういう気持ちでやれば、がんばれる。

 ただがむしゃらに白球を追っていた、何より野球が楽しくてしかたなかったあのころ。当時の気持ちを、思い起こしてほしかった。

 3日、札幌市内で行われた激励会に出席した選手たちの顔は、日焼けし精悍(せいかん)になっていた。キャンプ中、朝から晩まで、汗を流してきた証しだ。放課後までの時間を指折り数える野球少年のように、胸を高揚させ、開幕の時を待っている。【本間翼】