<オープン戦:ロッテ5-12巨人>◇12日◇QVCマリン

 巨人原辰徳監督(55)がヤングGの外野陣に活を入れた。ロッテとのオープン戦で2打席連続三振した中堅手の橋本到(23)に代えて、3回裏から内野手の藤村大介(24)を起用。藤村は大胆采配に応えて2安打2打点の活躍を見せたが、指揮官は「センターのポジションに、だらしない人間が多すぎる」と一刀両断。チームは主軸好調で圧勝し、6連勝を飾ったが、日本一奪回へ若手の奮起を促した。

 3回裏の守備でセンターの位置へ走ったのは、内野手専門の藤村だった。2番中堅手で起用した橋本が2打席連続三振。原監督は早々に見切った。ベンチの若手外野陣には期待の逸材、大田も残っていたが、指名せず。送り出したのは1軍で外野での出場経験がない藤村だった。「センターのポジションにだらしない人間が多すぎる。いい形で来ている藤村を思い切って使った」。指揮官はチャンスを専門外の選手に与えた。

 橋本は決定的な好機をふいにした。3回無死二、三塁。苦しむロッテ涌井に2ボールと優位に立ったが、外角の直球に立ち遅れて2球連続ファウル。「甘い球をファウルにした」。最後は外角低めの球を空振りした。試合前まで打率3割3分3厘と結果も出していたが、ここで交代が宣告。原監督は「橋本に期待をかけて戦っているのに、打撃が巨人の2番としてふさわしくない」と厳しかった。

 「外野手行けるか?」と聞かれた藤村は「行けます!」と即答。転がり込んできたチャンスを無駄にはしなかった。入団1年目の2軍戦以来の外野守備。10日の阪神戦(伊勢)の試合前に外野の練習を行っていた。この日は先輩の長野のグラブを借り、1球ごとに動きを確認。2度の飛球を無難に捕球した。打撃でも5回1死二、三塁で左翼線への2点適時二塁打などマルチ安打を放った。「結果が出て良かった。何より試合に使ってくれたことがうれしい」。試合後には外野手用のグラブを発注した。

 センターは常勝巨人の中で唯一、空いているポジションだ。だが亀井は沖縄キャンプで右手人さし指を骨折し、松本哲は結果を残せず2軍へ。若手台頭に期待がかかり、チャンスも与えられたが大田は打率6分7厘。橋本も決定的な仕事を果たせない。その背景もあり、原監督は必死の姿勢を見せる藤村の可能性を広げ、ライバルに奮起を促すようなタクトを振るった。

 ヤングGの外野陣は悔しさを募らせた。橋本は「正直、初めは(交代は)泰示(大田)だと思った。屈辱的というか、悔しさが残った。攻守で結果を恐れずに行く姿勢を見せたい」と誓った。大田は「何とか自分を変えたい。悔しい」と言葉に力を込めた。阿部ら主軸は万全だ。勝負の世界にチャンスは何度もない。原監督が脇を固める若手たちに、采配で伝えた。【広重竜太郎】

 ◆巨人外野のレギュラー事情

 現時点で長野のレギュラーは確定的だ。新外国人のアンダーソンもオープン戦打率4割で有力とみられる。ベテラン高橋由はこの日2安打と上昇気配で技術も健在だ。この3人なら中堅に長野、左翼にアンダーソン、右翼に高橋由が濃厚だが、高橋由はシーズン全試合出場は難しい。そこで一角が空いた場合、長野を右翼に回すと中堅に守備範囲の広い選手が求められる。大田、橋本は候補に挙がってくるが、決め手に欠くのが現状だ。