<阪神1-0広島>◇29日◇甲子園

 福留の200号に、阪神ランディ・メッセンジャー投手(32)は武者震いした。残るは9回。大男は意気に感じて右腕をしならせた。2安打完封での今季2勝目だ。2回から照らすカクテル光線に背番号54の笑顔が映えた。

 「最高の気分。両チームで4安打だから、しびれたよ。直球のコントロールとフォーク、カーブもよかった。自分の投球ができた」

 広島バリントンと息詰まる投手戦を演じた。4回まで両チーム無安打。5回に先に安打を許したが、冷静だった。雨天の影響で30分試合開始が遅れても、小雨が降り続いても、落ち着いていた。表情を変えず最速150キロの直球を外角いっぱいに決めた。三振も自己最多タイの12個奪った。

 ストレスはピークに達していた。前回登板の23日中日戦(ナゴヤドーム)では6回3失点で降板。代打を告げられると「自分への怒り」を抑えきれなかった。ヘルメットを投げつけ、叫び続けた。マートンらに止められ落ち着いたが、やり場のないストレスがたまっていた。開き直って、結果を残すしかなかった。

 「ゲームは進んでいくんだ。考えても仕方ないことはできるだけ考えない。マウンドに立ったらゼロを9個並べることだけだ」

 人事を尽くしていると、天命が訪れた。8回に福留が先制ソロを届けてくれた。地鳴りのような歓声に「あの日」を思い出した。07年8月7日。米大リーグ・ジャイアンツに所属していたメッセンジャーは中継ぎとして登板。バリー・ボンズの通算756号を見届けていた。「アンビリーバブルだ。あの時に負けずとも劣らない、すごい雰囲気だった」。メモリアルに立ち会い、完封でストレスも発散できた。メッセはもう大丈夫だ。【池本泰尚】

 ▼阪神メッセンジャーが1-0完封勝利。阪神の外国人投手による1-0完封は、郭李建夫が96年4月17日ヤクルト戦(甲子園)でマークして以来18年ぶり。この時も、チームは2安打ながら新庄のソロ本塁打で勝った。

 ▼完封勝利は来日6度目で、阪神外国人投手では単独2位(1位はバッキー22度)。中5日登板では12年9月5日巨人戦、13年9月23日ヤクルト戦に次ぎ自身3度目。

 ▼12三振を奪い、今季初で通算7度目の2桁奪三振を記録。1試合12奪三振は自己最多タイ。また、今季43奪三振はセ・リーグ1位。