DeNAは13日、キューバ代表の主軸、ユリエスキ・グリエル内野手(29)の獲得を発表した。契約は今シーズンまでで、契約金と年俸は合わせ推定1億円。ビザを取得次第来日し、早ければ5月下旬にもチームに合流する。背番号は代表でも背負う「10」。高田GMは「キューバのスーパースターだと聞いている。1日でも早く見たい」と話した。

 グリエルは二塁、三塁が本職で遊撃も守れるユーティリティープレーヤー。中畑監督は「二塁手」での起用を主に、打順も中軸を任せることを明言した。「本人が安心して守れるのはセカンド。実戦の心配はあるけど、本人が『OK』と言えば(すぐに)使う」。2軍での試合出場など、調整法は本人に任せる方針だ。

 外国人選手の1軍枠は4人だが、グリエルの即起用に迷いはない。中畑監督は「バッティングの構えも格好いい。映像を見たけど、あれだけフルスイングできるのは魅力。足も速いみたいだし」と絶賛した。グリエルは球団を通じ、「日本は有数のレベルの高いリーグなので、ずっとプレーしてみたいと思っていた。その希望がかなって大変うれしく思う。この機会をくれたDeNAベイスターズに感謝している」とコメントした。

 球団トップの“飛び込み営業”から、グリエル獲得への道は始まった。DeNA池田純球団社長(38)は13日、「的確な情報を集めて、誠意を持って話ができた結果」と振り返った。

 昨年12月、「キューバは未開の市場。可能性がたくさんあるはず」と同国リーグ視察のため現地入り。同9月にキューバ政府が自国選手の他国でのプレーを認めたことを受け、情報は集めていたが「右も左も分からない状態。でも会ってみないと何も始まらない」。キューバ野球連盟関係者に直接名刺を切ることが、獲得への第1歩だった。

 そこからは「外国との折衝方法をたたき込まれた」商社時代の経験を生かし、人間関係を構築していった。キューバの事情や同国のビジネスに精通する日本人からも情報収集。文化も学び、先方の交渉の進め方や意思決定への流れの把握に努めた。渉外担当は計3回現地入りし協議を重ねた。最も重視したのは「お互いがWIN

 WINにならないといけない」ことだった。DeNAのWINはNO・1選手=グリエルの獲得。今年1月に獲得希望リストの提出を求められた際も、グリエルの名前だけを伝えた。一貫した姿勢で臨む中で感じ取ったキューバ側のWINは、「NO・1選手を今年、日本のしっかりした環境下に送り出すこと」。プレー環境だけでなく、生活面のサポート体制を強くアピールした。

 この日池田社長はキューバへ出発。グリエルと初対面する予定。今回は同国スポーツ庁、野球連盟からの招待。築いた関係の深さがうかがえる。手土産はカステラとウイスキーの「山崎」で、「カステラはどの国に持っていっても喜んでもらえる。そして、ラムの国に日本が誇るウイスキーです」。このチョイスも商社時代の経験からだった。【佐竹実】

 ◆ユリエスキ・グリエル

 1984年6月9日、キューバ生まれ。父ルルデスは92年バルセロナ五輪金メダリスト。キューバ国内でプレーし、02年インターコンチネンタル杯から代表入り。第1回WBC(06年)では二塁手でベストナイン。第3回WBC(13年)は主将。12年11月の侍ジャパン強化試合で涌井から本塁打。183センチ、89キロ。右投げ右打ち。