<ロッテ7-1巨人>◇23日◇QVCマリン

 1勝が遠い。巨人内海哲也投手(32)は、今季9度目の先発も勝てなかった。5回まで被安打1、無失点の好投も、要所の6回、ロッテの先頭荻野貴に同点ソロを打たれた。7回も2死までこぎ着けたが、鈴木に適時三塁打を打たれ勝ち越しを許し、降板した。いまだ勝ち星なしの5敗目。エースに試練が訪れている。

 菩提(ぼだい)樹のごとく幕張の赤土に根を張り、どしっと立った。1つ1つの動作を確実にゆったり、しかし止まらずに連動させた。巨人のエース内海は、小手先でボールを操作するような投手じゃない。順序よく体を使って、理詰めでボールに力を伝えた。ギリギリまでボールを離さないから直球は伸び、スライダーとチェンジアップが外角低めに収まった。右打者を並べたロッテ打線をもてあそんだ。

 わずかなほころびは4回2死、今江の初球に与えた死球にあった。直球が引っかかり、おしりに当たった。イニング間のキャッチボールにもちょっとした変化があった。変化球の収まりが悪くなり、浮いていた。5回2死、打者成瀬。修正目的であえて丁寧に投げた。この回を3者三振。被安打1で折り返すも、直後の6回に暗転した。

 ピンと立ち、右の肩越し、上から相手ににらみを利かせ、的を狙っていた。この形が微妙に崩れた。少しかかと体重になった。根っこが揺らぐと、幹も揺らいだ。軸の移動に伴って頭が一塁側に突っ込み、ミットをのぞき込む形になった。球持ちが悪くなり、ボールが全体的に高めへ上がった。荻野貴への2球目。チェンジアップが抜け同点本塁打された。7回は先頭の8番江村に四球を与えた。2死二塁で鈴木への2球目。外角要求の直球が真ん中、かつ高めに抜けた。勝ち越し適時三塁打で降板した。

 5回で65球。スタミナが原因ではない。今季9度目の先発で勝てないのは偶然ではない。投球フォームが定着していない。要所で制球が狂う。本人は「今シーズンずっとそうなので。修正できるように頑張ります」と考えながらコメントした。原監督も「いいピッチングをしているんだが、踏ん張れなかった」と口が重かった。通算108勝の男がこんなに苦しんでいる。投手は繊細な職業。エース1人に抱え込ませず、みんなで技術を洗う必要がある。【宮下敬至】

 ▼内海が9試合目も勝てずに0勝5敗。巨人で開幕から9試合先発して白星なしは、05年桑田(12試合で0勝7敗)以来、9年ぶり。巨人投手の開幕連敗は74年高橋一の9連敗が最多で、開幕5連敗以上は05年桑田以来8人、9度目だ。桑田は5敗目時点の防御率が10・22だったが、内海は3・70。防御率3点台で開幕5連敗は、巨人では00年ガルベス(5敗時に3・45)以来の不運。