<楽天1-9阪神>◇4日◇コボスタ宮城

 どやっ!

 嫌な流れを剛球でシャットアウトや。阪神藤浪晋太郎投手(20)が楽天戦で7回6安打1失点の好投。今季初めて2試合連続での勝利投手。4勝目を挙げた。1軍公式戦で自己最速の156キロをマーク。前夜のサヨナラ負け、この日自らの一塁悪送球など暗いムードを力投で吹き飛ばした。さあ、この勢いで猛虎復活の快進撃狙いまっせ!

 小関を空振り三振に打ち取ると、藤浪は右手でグラブをたたいた。前戦に続いてノーワインドアップからの投球で、7回を投げ6安打1失点(自責はゼロ)。今季初の2試合連続勝利で4勝目を挙げた。自身の貯金を作ったのも今季初めてだったが、試合後は険しい表情のまま口を開いた。

 藤浪

 よくはなかった。僕のエラーで点を取られたのもありますし、60点。普通ですかね。

 自己採点は厳しかった。だが、好調ではない状況での白星に価値がある。仙台のファンを驚かせたのは1回だ。2番西田に投げた高めの直球は、1軍公式戦で自己最速を1キロ更新する156キロを計測。バットが空を切ると、一瞬の間を置いて大歓声が上がった。

 くしくも、この日は日本ハム大谷が160キロをマーク。ただ、藤浪が「球速は出ればいいですけど、あまりこだわりはないので」と関心を示さなかったように、この日は粘投での白星。1回に投前ゴロを一塁に悪送球し、先制点を献上。3、5回を除いて走者を背負っての投球が続いた。それでもホームは踏ませない。6回以降はカットボール、スライダーを軸となるボールに変え「3巡目の壁」さえもクリアした。

 藤浪

 自分の中で今日は投げやすいボールだったので、多めに使った。うまくカウントをとれて、緩急をつけられたと思います。

 どん底から急激な上昇カーブを描いた。5月20日に2回6失点KO。だが、そこから8回無失点、7回1失点と短期間で立ち直った。「自分のことは自分が一番知っておかないといけない。どの方向に進んでいるのか、1歩下がって自分を見るというか、そういうことは大事」と話すように藤浪は、自分を客観視。ノーワインドアップも、中西投手コーチからの助言を受け、頭で理解して実践。その分、のみ込みも早かった。

 バント失敗、守備のミスなど課題はある。だが2年目のジンクスと言われたのは、もう過去の話。意地の詰まった4勝目は、確かな成長を遂げている証拠だ。チームが前夜に喫した3点リードからの9回サヨナラ負けの悪夢も消し去った。虎は楽天に12年から6連敗を食らっていたが、それも止めた。広島、巨人に接近し、4位中日とは3ゲーム差に広げた。新たな藤浪が白星を積み上げ、猛虎の推進力となる。【池本泰尚】

 ▼藤浪が1回、1軍の公式戦で自己最速の156キロをマークした。156キロは今年2月25日韓国LGとの練習試合、3月25日のウエスタン・リーグ中日戦で計測したことがあるが、1軍公式戦での最速は155キロだった。大阪桐蔭時代、甲子園で春に1回、夏に3回、153キロを記録している。

 ▼阪神は対楽天戦の連敗を6でストップした。昨年は4戦全敗だった。阪神の交流戦での同一チームの最多連敗は09年~10年の西武戦で楽天戦同様、6連敗。