<ソフトバンク4-7楽天>◇13日◇ヤフオクドーム

 やっと、やっと、勝てました。楽天松井裕樹投手(18)が9連勝と波に乗るソフトバンクに7回4安打2失点と好投。自己最多の9三振を奪い、チームの6連敗も止めた。前回6日のロッテ戦では降板後の9回に5点差を逆転されるなど、勝ち運に見放されていた。この日はリリーフ陣が踏ん張り、ようやく先発での初勝利を手にした。敗れれば、自力でのクライマックスシリーズ進出が消滅するチームの危機も救った。

 待ちわびた白星に、18歳の本音がポロリとこぼれた。松井裕はお立ち台を終え、選手通路で待ち構える報道陣を見て「やっと…、やっとですよ」とひと息つき、笑顔を見せた。入団以来何度もはじき返された先発初勝利の壁を乗り越えた。

 圧巻だった。9連勝で首位を走るソフトバンク打線を手玉に取った。最速147キロの直球を、ズバズバと内角に投げ込んだ。極め付きは6回。今宮、内川、李大浩を直球で3者連続三振に斬った。前回対戦まで7打数5安打と圧倒されていた内川も、この日は無安打に封じた。鬼門の6回までわずか1安打、自己最多の9奪三振の快投。「6回に点を取られ、交代することが多かったので気持ちを入れました」と胸を張った。

 予定では4月に、この喜びを味わっているはずだった。「正直、もっと早く勝てるとは思ってました」。6月に1軍再昇格すると、ふと漏らした。5球団が競合の末、ドラフト1位で楽天に入団。即戦力として、寄せられる期待に、早く応えられるつもりでいた。だが伴わない結果。「悔しいですよ、そりゃ。コーチの方にどれだけ言葉をかけられても、やるか、やらないかは自分次第。僕は、期待に応えたい。やりたいんです」。ふがいない自分への怒りは、ファームでの走り込みの量を増やした。

 だからこそ7回に燃えた。100球を超えて息切れし、2失点。なおも1死一、二塁のピンチでも星野監督から降板指示はなかった。開幕から我慢して使い続けてくれた指揮官からの愛のムチ。球威は落ちていたが、「前は途中で代えられて悔しい思いをした。気持ちでゲッツーを取れて良かった」と併殺に仕留め、意地を見せた。

 先発9試合目でつかんだ勝利でチームの連敗を6で止め、CS自力進出もつなぎ留めた。松井裕は「なかなか勝てず、1勝できてホッとしてます。(ファームの経験を振り返り)1日も無駄な日はなかったです」。ルーキーの飛躍はここから始まる。【島根純】

 ▼松井裕がプロ入り最多の9奪三振で2勝目。同じ高卒1年目の07年田中(楽天)の2勝目は5月2日ソフトバンク戦だったが、この時もソフトバンクは9連勝中。2人ともプロ2勝目は、ソフトバンクの10連勝を阻止する価値ある白星となった。松井裕はこの日も本塁打を打たれず、これで62回2/3を投げて被本塁打0。現在、60回以上投げて被本塁打0は両リーグで松井裕だけ。デビューから60回以上被本塁打0を続けた高卒新人は、66年堀内(巨人=70回1/3)以来、48年ぶりだ。