<中日1-4巨人>◇24日◇ナゴヤドーム

 巨人菅野智之投手(24)が、6回無失点の好投で3年連続のリーグ制覇に手をかけた。本調子ではなく、変化球主体の投球だったが、4イニング連続併殺を奪って、ハーラートップに1差と迫る12勝目をマーク。防御率、最高勝率と合わせ、「3冠」の可能性も見えた。広島が敗れ、優勝へのマジックは2。今日25日にも、名古屋の地でリーグ3連覇が決まる。

 180度切り替えた。1回だった。「真っすぐが抜けてる」。菅野は直感した。勝つために、出した結論は変化球主体の新たなスタイルだった。6回を投げ、3安打無失点。77球のうち、19球がカーブだった。「思い通り投げられなかった中、カーブを使い出してからは力を抜いて投げられた」。慌てず、冷静に。ピンチを力に変えた。

 今年の特徴が詰まったシーンだった。名古屋入りの22日、菅野は2枚の紙を眺めた。昨年と今年の自分の成績だった。「へぇー、そうなんだ」。奪三振でのアウトの比率が減った一方で、ゴロアウトが増えた事実に目がとまった。1回1死一、三塁のピンチで森野を投ゴロ併殺。「低めに、丁寧に」。4イニング連続の「併殺地獄」で、中日打線を意気消沈させた。

 誰にも負けないものは何なのか。唐突な質問に、菅野は「ひらめき。失敗を恐れずに実行すること」と言った。昨年の西武との交流戦だった。十亀との対戦に、打席内で初めて恐怖を感じた。「ボールがどこからくるか、わからなかった」。すぐに、思った。「年を重ねた時、十亀さんみたいなフォームもいいな」。どうやって勝つか-。目に入るもの全てが、進化への材料に変わる。

 右手中指の腱(けん)の炎症から復帰後、3連勝を飾った。勝ち星はトップに1差に迫る12勝目。防御率は2・36でトップの座を守った。最高勝率も含め、「3冠」も視野。MVPの有力候補に躍り出た。「1カ月以上、離脱してますし、迷惑をかけた。まだまだです」。トップに入れた心のギアをニュートラルに戻し、再びハンドルを握った。菅野の77球は、原監督の勝負の鉄則にも通じた。「常にニュートラルに入れておくことが大事。『ここが勝負だ』って時にギアを3速、4速、トップに上げればいい。常にニュートラルにしておくことで何かが起こっても、冷静に対処できる」。不調でも、カーブ、投球術と“ギア”を変え、勝ちきった。

 今日25日にもリーグ3連覇が決まる。試合後、原監督は鉄則に立ち返った。「まだまだ。(マジックは)減ったけど、一足飛びにはいかない」。マジックは2。歓喜の時はもう、すぐそこまで迫った。【久保賢吾】

 ▼巨人はプロ野球記録の6個に迫る1試合5併殺を奪い、ピンチを切り抜けた。巨人の1試合5併殺は98年8月16日阪神戦以来16年ぶり。併殺を記録したのは1~4、7回。巨人の4イニング連続併殺は98年8月11日横浜戦以来になる。

 ▼巨人が勝ち、2位広島が敗れたため巨人の優勝マジックは2。今日25日に巨人が中日戦に勝つか引き分け、広島がヤクルト戦に敗れると3年連続36度目のセ・リーグ優勝を決める(1リーグ時代の9度を含めると通算45度目のV)。