<パCSファイナルステージ:ソフトバンク4-6日本ハム>◇第5戦◇19日◇ヤフオクドーム

 日本ハム大谷翔平投手(20)が、崖っぷちのチームを救った。投手としてファイナルステージ初先発。2回に4点を先制されたものの、粘って7回6安打4失点。3回以降は「0」を並べ、逆転勝利を導いた。野手でのフル出場から中1日。疲労で体は重かったが、中盤から変化球主体の投球にスタイルを変更し、12奪三振をマーク。今日20日の最終決戦に望みをつないだ。

 両拳を突き上げた。大谷はベンチで、喜びを爆発させた。延長11回、中島の決勝打。粘投が、報われた。「(勝って)1試合延びるか、負けて終わりかのマウンドだったけど、冷静に入れた。気負いはなかったです。申し訳ない投球だったけど、(打線が)追いついてくれた」。7回6安打4失点。降板から1時間以上たって、ようやくホッと息をつけた。

 プロ入り後初めて、野手でのフル出場から中1日でマウンドに上がった。2回、死球を挟んで4連打。150キロを超える直球がことごとく真ん中に集まり、はじき返された。栗山監督は「(中1日で登板させたことを)反省している」と、疲労によって不調に苦しむ姿に、自戒していた。2回に一挙4失点。逆転日本シリーズ出場への頼みの綱が、引きちぎれかけていた。

 それでも、大谷は崩れなかった。比較的感触の良かったスライダー、フォークに活路を見いだした。3回以降に投じた81球のうち、直球は21球のみ。「(使えるボールを)選択していけたのは良かった」。2年目を迎えた今季、コンビを組む捕手・大野に“意見”するようになった。「今日はフォークが使えます。中心にいきましょう」。自身の状態、配球の希望などを伝えるようになった。出されたサインに首を振ることも増えた。はっきりと自分の状態を把握できることで、調子を立て直すすべを身につけた。5回無死一、二塁のピンチには、明石、李大浩を変化球で三振に仕留めた。結果的に、3回以降「0」を並べたことが、逆転勝利につながった。

 今日20日の最終決戦。大谷は「出る準備はしています。全力で出し切るつもりで臨む」と言い切った。しかし、投打「二刀流」の起用ルールを厳格に守ってきた栗山監督は、首を縦に振らなかった。「(ベンチ入りから)外す。ダメなものはダメ。明日1日だったらやれるけど、先のこともある。体に負担が大きい」。阪神との頂上決戦で再び暴れるために、つないだバトンは味方に託し、ベンチ裏で声をからす。【本間翼】

 ▼大谷が7回を投げ12奪三振。プレーオフ、CSの2ケタ奪三振は8人、10度目で、大谷の20歳3カ月は06年2S第1戦ダルビッシュ(日本ハム)の20歳1カ月に次いで2番目の年少記録。日本シリーズで20歳以下は57年第1戦稲尾(西鉄)の20歳4カ月しかおらず、ポストシーズンでも2番目の年少記録となった。