<SMBC日本シリーズ2014:阪神1-2ソフトバンク>◇第2戦◇26日◇甲子園

 上から翔太が阪神打線をねじ伏せた。「SMBC日本シリーズ2014」第2戦に先発したソフトバンク武田翔太投手(21)が、カーブと見間違うほど落差のある縦スライダーを操り、7回を3安打1失点。日本シリーズ初登板勝利で1勝1敗のタイに戻した。甲子園初マウンドながら、6回2死まで完全投球はパ投手で日本シリーズ最長だった。第3戦は28日、ヤフオクドームで行われる。

 宝刀はドロンと縦に落ちる「魔球」だった。ソフトバンク武田が曲がりの大きな変化球で甲子園を驚かせた。2回、第1戦で3打点の4番ゴメスを2球で追い込むと、本塁のかなり手前でワンバウンドするボールで空振り三振を奪った。一見するとカーブのような軌道を描く勝負球は、武田いわく「縦スライダー」。その120キロ台の魔球に加え、4回からは130キロ台の横スライダーも追加。最速150キロの直球との緩急で、6回2死まで1人の走者も許さなかった。

 「緊張しました。阪神ファン一色じゃないですか。ヒット打たれた時、(盛り上がりが)点が入ったみたいだった。縦のスライダーが決まっていた。それだけです。途中から打ってきていると思ったが、合ってない感じだった」。6回2死から代打狩野に左前安打、続く西岡に右翼線適時二塁打。いずれもボール気味の縦スライダーを打たれたが、それでも最後まで勝負球として使った。秋山監督は「度胸があるので自分の投球ができた。先に1点もらったのが大きかった。(終盤のピンチも)よく粘った」と、21歳の勝負根性を褒めた。

 1年目に8勝を挙げたが、期待された昨年は右肩を痛め4勝。痛みで腕が横振りになっていた。今季もずっとリハビリ調整。その間に体重が90キロを超える大きな体にし、肩周りの筋肉を鍛えルーズショルダーになりにくい体を目指した。

 リハビリ中、肩の負担を減らすため、真上ではなく、やや斜めにするオーバーハンドへの変更の話も出た。真上からだから曲がる縦のスライダー。武田は自分のスタイルを貫き、8月に戦列復帰。3勝を挙げた。

 この日は地元宮崎でも地上波中継された。武田の後援会を運営する寺田正直さん(36)は「全国中継ですし、ここで活躍するのは、後援会にも大チャンスですね」。昨年4月に発足したが、武田の不振で会員は2000人弱から増えなかった。日本シリーズという大舞台での快投で一気に知名度を上げた。

 高校時代に憧れても届かなかった甲子園のマウンドを存分に楽しんだ。強心臓の21歳右腕が、大甲子園にのまれそうになっていたチームを救った。1勝1敗のタイ以上に勢いをつけて福岡に戻る。【石橋隆雄】

 ▼シリーズ初登板の武田が6回2死から代打狩野に打たれるまでパーフェクト。シリーズで初回から5イニング以上を完全に抑えた先発投手は、8回完全で降板した07年第5戦山井(中日)以来6人目で、武田の5回2/3は山井の8回、62年第2戦村山(阪神)の7回1/3に次いで3位の記録。過去の5人はすべてセ・リーグの投手で、パ・リーグの先発投手が5回以上を完全に抑えたのは初めてだ。また、シリーズ初登板初先発の投手としては、79年第2戦山根(広島)の5回を上回る無走者の最長イニングとなった。<武田翔太アラカルト>

 ◆生まれ

 1993年(平5)4月3日、大分県別府市。小1で宮崎市へ転居。

 ◆野球歴

 住吉小3年で野球を始める。宮崎日大では1年秋からエースとなり同年秋の九州大会出場。甲子園出場なし。

 ◆ドラフト

 11年1位でソフトバンク入団。

 ◆デビュー

 12年7月7日、日本ハム戦(札幌ドーム)で初登板初先発。5回まで無安打無得点と好投し、6回1安打で初勝利。

 ◆快進撃

 初勝利から8月19日オリックス戦まで4連勝。オール先発では2リーグ制後の高卒新人でパ初の快挙。同年8勝1敗でパ・リーグから優秀新人賞の特別表彰。

 ◆サイズ

 186センチ、82キロ。右投げ右打ち。

 ◆年俸

 今季推定1950万円。

 ◆親戚

 人気デュオ「コブクロ」の小渕健太郎とは親戚。

 ◆家族

 独身。