【ホノルル(米ハワイ州)11日(日本時間12日)=宮下敬至】慎之助から勇人へ-。巨人阿部慎之助捕手(35)が、来季から主将を務める坂本勇人内野手(25)に金言を送った。阿部は07年から、8年間もキャプテンを通した。前夜行われた優勝旅行のパーティー会場で、坂本への禅譲が正式に決まった。主将の唯一無二の役割として、チームが沈んだ時に仲間を鼓舞する言葉の力を挙げ「勇人なら絶対にできる」と太鼓判を押した。

 巨人の太陽が珍しく、少しだけしんみりしていた。草野球場での練習を終えた阿部は「オレ、8年間もキャプテンやってたんだ」とつぶやいた。指を折って「26、27歳の時からか…。勇人は25歳か。責任感を持ってやればいい。アイツは大丈夫」と言った。

 キャプテンの仕事は、1つしかないと思っていた。「負けが込んだ時、みんなが下を向かないように、元気づける言葉をかけられるか。それだけなんです」と一気に吐いた。チームに逆風が吹くたび、阿部の言葉で息を吹き返してきた。修羅場をくぐり抜ける最大の武器は言葉。坂本にも受け継いでほしいと願う。

 本音はある。「本当はね、キャプテンはもう2年やりたかったんだ。2年やれば、ちょうど10年やったことになる。勇人にも自分がキャプテンをやり始めた時と同じ年齢で、バトンタッチできたからね。それが少し、心残りかな」。坂本を認めるから、重荷にならないか気にしている。一方で、あらがえない世代の交代も分かっている。一抹の寂しさを抱えつつ、新主将を側方で支援する。阿部にとって節目のハワイだ。<阿部主将の言葉の力>

 ◆「家族やファンの方々を幸せにすることを目標に頑張りましょう」(07年1月31日、宮崎キャンプでの主将就任あいさつ)

 ◆「至らない点もあるかと思いますが、日本一奪回に向けたチームのまとめ役をしっかり務めたいと思います」(08年11月、球団史上4人目となる選手会長も兼任)

 ◆「今の状況を真摯(しんし)に受け止めよう。何連敗しようともやらないといけないわけだから。現状を打破できるのも選手。僕らは3年間いい思いをしてきたし、これも神様が与えてくれた試練だと思って、みんなで力を合わせてやっていこう」(08年8月、チームの苦境に緊急ミーティングで)

 ◆「残念ながら何人かは最終メンバーから外れる。でも、僕は今日ここに集まった33人が侍ジャパンだと思っている」(13年WBC代表候補合宿で。落選組も交え、決起集会を開いた)

 ◆「これだけチーム状態、個人成績が悪くても、チームは首位にいる。これは逆にすごいこと。これで優勝できたら、みんなにとって一番価値がある優勝になる。ここまで来たら、個人なんて関係ない。一気に優勝しよう」(14年8月下旬の決起集会で。9月のラストスパートにつなげた)