西武炭谷銀仁朗捕手(27)が慎之助の肝っ玉を受け継ぐ。9日、急所を守るファウルカップ(通称・金カップ)を、巨人阿部からもらったことを明かした。今季から一塁手転向の偉大な先輩捕手が愛用していたモデルを継承。日本代表でもチームメートだった阿部から感じた「信頼感」を今季のテーマに掲げ、正捕手の座を守り抜く。

 宿舎に炭谷宛てに送り主「阿部慎之助」の宅配便が届いた。届けられたのは新品のファウルカップ。「昨年、試合中に急所にボールが当たって病院送りになった。阿部さんに聞いて、勧められたのがコレです」と昨季途中からの継続使用を決断。開幕に向けて阿部の予備を、2代目金カップとして譲り受けた。

 阿部が約10年、愛用したのは米国ショックドクター社の「フレックスカップ」。通常のカップは完全固形。フレックスカップは大事な所を守る部分は固形だが、サイドの部分は柔軟性のあるプラスチックで動きに合わせグニャッと曲がる。細長の形状でショートバウンドの下からの突き上げへの対応もしており、炭谷も「フィット感がいい」と装着感に大満足だ。

 阿部の肝っ玉を体だけでなく、心でも受け継ぐ。13年のWBCではともに日本代表。寝食をともにし、感じたことがあった。「芯の通った人だなと思った。何があっても、ぶれない」と器の大きさを見た。

 才能豊かな2年目の森が正捕手の座を奪う勢いを見せている。だが炭谷は数字でしのぐより、目に見えないものを今季のテーマに掲げた。

 炭谷

 信頼感です。ファンの方から打席に立った時に『炭谷、ダメか~』ではなく『何かやってくれる』という信頼を得る。首脳陣や選手から『銀仁朗に任せておけば大丈夫』という信頼感を得る。今までは数字を目標に置くことが多かったけど、信頼感の大きさにこだわりたい。

 阿部は捕手ミットを置く前に「捕手らしい捕手が少なくなった。でも銀ちゃんは、その1人だなと思う。オレは銀ちゃんを捕手として認めている」と言葉を残した。炭谷も思いを受け止めている。「代表でも一緒にやり、スーパースターの人に言ってもらえて、うれしい」。捕手阿部から最後の贈り物となる金カップを装着し、銀仁朗がチームの勝利のために守り抜く。【広重竜太郎】