<首都大学野球:日体大1-0東海大>◇第3週3日目◇26日◇サーティーフォー

 エース菅野智之投手(4年=東海大相模)に勝負を託した東海大が日体大に敗れる波乱があり、自力優勝の可能性が消滅した。菅野は8回までを5安打12奪三振無失点に抑え、最多連続イニング無失点のリーグ新記録53回を樹立。だが9回に野選と失策が絡み、自責ゼロのままサヨナラ負けした。日体大は勝ち点2で単独首位。残りの3カードを勝ち越せば完全優勝となり、6月の全日本大学選手権の出場権を得る。

 うなだれた。そして込み上げる涙をこらえた。0-0の9回裏。先頭の日体大・高橋巧に右中間二塁打を許した菅野は、次打者の投ゴロを三塁へ。しかし判定はセーフで、無死一、三塁。サヨナラのピンチにこん身の直球を投じるも、挟殺プレーで三塁・坂口が落球し走者は生還した。本塁脇で膝をつき、しゃがみ込んだまま立てなくなった。

 自責点はゼロ。不運な敗戦で、日体大に2連敗した。「まだ信じられません」と言葉を絞り出した。東海大がリーグ戦で勝ち点を落としたのは、06年秋の筑波大戦以来42カードぶり。07年秋就任の横井人輝監督(48)にとっても、菅野にとっても、同じ相手に2度負けるのは初の屈辱だった。

 157キロ右腕にとってはリーグ戦通算3敗目で、連勝記録が18でストップ。だがリーグ史に残る記録もある。4回最後の打者を左飛に打ち取った瞬間、日体大・山内泰幸投手(現広島投手コーチ)が持つリーグ最多連続無失点記録48回2/3を更新。8回まで三塁を踏ませぬ力投で、53回の新記録を打ち立てた。「意識しませんでした。終わってみたら、ああ達成されてたんだなって」。更新の瞬間はグラブをぽんとたたいただけ。個人記録など気にならないほど勝利に集中した。

 負けはしたが、エースとして力投した。前日25日の敗戦で「人任せになっているチームを変えられるのは自分だけ」と奮起。責任を背負い込んだ右腕は、最速151キロ、6安打12奪三振の結果を残した。リーグ通算奪三振は253にのぼる。横井監督も「菅野は責められない」とかばった。

 日体大が残り3カードで勝ち点を取ると、6月の全日本大学選手権に出場できず、目標の「日本一」に挑戦できない。だがまだ可能性はある。「日体大にあきらめない姿勢を教えられた。もう1回強くなれるように、引き締めてやっていきたい」。エースとして副主将として、この悔しさを成長の糧とする。【鎌田良美】