<東京6大学野球:明大3-2法大>◇第7週最終日◇28日◇神宮

 粘りの明大が、勝ったチームが優勝の大一番で、3-2と法大を破り、3季ぶり35度目の優勝を決めた。勝ち点5の完全優勝。4敗2分けを挟み、16試合での優勝は1963年(昭38)春の慶大以来、50年ぶり最多タイになった。8回から救援した山崎福也投手(3年=日大三)が2回無失点で6勝目。法大は開幕9連勝から、まさかの連敗で2季連続優勝を逃した。優勝校が2位より勝率が低いのは、4年ぶり5度目の珍事。明大は全日本大学野球選手権(6月11日開幕、神宮ほか)に出場する。

 定石なら敬遠の四球だった。しかし、戦う明大ナインは勝負を選んだ。同点の8回2死三塁。打席に本塁打と打点でトップに立つ法大の4番西浦直を迎えた。

 善波達也監督(50)がマウンドに向かう。「僕は歩かせようと言ったんです」。山崎と坂本誠志郎捕手(2年=履正社)は首を振った。「打たせないから、勝負させて下さい」。

 初球。内角へ146キロ直球。追い込むと最後は146キロ直球で力ない右飛に打ち取った。3球連続の直球勝負に、山崎は「負ける気はまったくしなかった」と言った。監督の勝負勘を上回る、選手の気迫だった。

 負ければV逸の試合は、これが5試合目。土壇場の「明治魂」は健在だ。直後の8回2死二塁から敵失で決勝点を奪った。1-10で敗れた4月27日の早大戦以降、全員がバットを短く持つ。今季を象徴するように、泥臭く勝利をつかんだ。

 この日も早朝から練習を行い、神宮入り。リーグ戦中も午前5時20分に練習を始める。善波監督は「伸び盛りの時。シーズン中の練習も、調整にはしない」が信条だ。試合前も、走り込み、振り込み、投げ込む。

 11試合目の登板の山崎は、3連投で総投球数934球。今春は米国キャンプを行い、大学初のドジャースマイナーチームと試合を行った。異国で連日200球以上投げ込んだ。「ストレートの伸びは今日が一番良かった」。勝負どころでこんな投球をするために、厳しい練習を積んできた。

 16試合かけての優勝は、半世紀ぶり2度目。試合後、3度宙を舞った善波監督の目に涙があふれた。試合前日は必ず行きつけの鉄板焼き店で、とん平焼きを食べる。雨天中止を2試合含めて、験担ぎも18度。苦しんで苦しんだ先に、栄光が待っていた。【前田祐輔】