<運命の日を待つ(上):大学生編>◆田中英祐投手(白陵-京大)

 努力の価値を知る人だ。京大工学部で専門分野の勉強を続け、31敗しながらも関西学生野球リーグで同大学史上最多8勝を残した。並大抵の毎日ではできなかったこと。京大も変わった。最速149キロ右腕の田中が打撃投手を務めたことで味方打線は練習から速球を体感し、試合で打ち負けなくなった。守備のレベルも上がった。チームを変えたエネルギーこそ田中の誇れるところだと思う。

 獲得するプロ側は「伸びしろ」に期待するが、本人は学生時代の共通の話題を持つ知り合いもいない環境で、自分のレベルを上げていかなければならない。「京大初」という個性の鮮度が落ちないよう、1軍で常時投げるレベルに達する速さも望まれる。これも並大抵の努力では実現できない。ただ京大を変えた田中なら、可能と信じている。【堀まどか】