5年ぶりのBクラスに終わった阪神の厳冬更改が始まった。1日、主力の契約更改がスタート。まず“標的”となったのが、今季1軍登板わずか1試合に終わった久保田智之投手(28)だ。今季年俸から3300万円ダウンの7700万円で白旗。阪神は今季、国内選手合計で12球団トップの高額年俸を誇ったが、坂井信也オーナー(61=電鉄本社社長)も「厳しくて当然」と断言。この日は7選手中5選手が減俸となるなど、4位に終わった選手たちには厳しい冬が到来した。(金額は推定)

 出された数字に、黙って判を押すしかなかった。先発転向を目指した今季。2月のキャンプから右肩痛で出遅れ、1軍登板わずか1試合に終わった久保田には、何も抵抗する材料が手元になかった。「今年は何もしてませんからね。今日はサインするだけでした」。3300万円の大幅減俸で、3年ぶりの大台1億割れ。表情は当然のことながら、さえない。それでも素直に現実を受け入れた。

 久保田といえば、07年にシーズン最多登板記録(90試合)を樹立。ここ数年はJFKの一員として中継ぎ陣を支えてきた一人だ。昨年も69試合に登板。タフネスぶりを発揮したが、今季はその反動からか、右肩痛を発症してしまった。

 沼沢球団本部長は「これまでの積み重ねはもちろん加味(考慮)している」としながら「今年のダウンには関係ない」と断言した。「彼は故障もあったが、1試合しか登板してない。今年は1年間、ほとんど仕事ができなかったから」とシビアに査定した理由を説明した。

 チームは昨オフ、真弓監督を新監督に迎え、4年ぶりの覇権奪回に向けて新スタートを切った。オフの契約更改では国内選手合計で12球団トップの高額年俸を誇るチームに生まれ変わるなど、縁起のいい話題にあふれていたが、ふたを開けてみれば結果は4位。1度も優勝争いに加わることができず、クライマックスシリーズにすら進めなかった。

 坂井オーナーからも直々に厳冬宣言が出た。「(査定は)厳しくやっている。4位という成績だから、厳しいというのは当然」と妥協は一切、許さない考えだ。「個人の成績が反映されるとは思うけど、優勝と4位ではね。結果を出したら出したで、報いるように努めたい。それを目標にしているんだからね」。優勝した際の大盤振る舞いを約束したのは、逆に今オフの揺るぎない姿勢を強調することにもなった。

 久保田は厳しさをバネに来季の巻き返しを誓った。「今年は何一つ、チームに貢献できなかった。それが悔しい。来年は今年の分も頑張りたい。先発と言われたらそこを目指すし、中継ぎならそこを目指す」。来季の起用法は伝えられていないというが、当面の目標は開幕ローテ入りになる。チーム成績に加え、個人成績も胸を張れる数字を残せなかったトラ戦士には、厳しい冬の風が吹きつけそうだ。