ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表の山本浩二監督(66)が、低迷する打線を大刷新する可能性が出てきた。今日8日の2次ラウンド(R)初戦で、B組を1位突破した台湾と対戦。不動のレギュラーと明言していたスランプの長野久義外野手(28)をスタメンから外すことも視野に入れ、テコ入れする見込みだ。台湾先発の王建民投手(32=ナショナルズFA)対策で左打者を軸に、打線を構成するプランも浮上。激戦を制するためにカンフル剤を注入する覚悟を固めた。

 大勝負へ向け、情は捨てるのか-。山本監督が一大決心で、理想型としていた打線のキーマンを一時「構想外」とする可能性が出てきた。7日、2次Rの舞台・東京ドームで行われた全体練習。シートノックでは、中堅を2選手が務めた。絶対的なレギュラーと公言していた長野と、もう1人は糸井。明らかに台湾戦以降を意識してのシミュレーションを敢行した。機能しない侍打線改造への意思、そして危機感が表れていた。

 手を打つ。山本監督はこの日の公式会見で、海外メディアも前にして大きな決断を下す考えがあることを示唆した。「状態のいい選手を起用したい。それ以上は、しゃべりづらい」。1次Rでは、初戦ブラジル戦(2日)から打線低調で、終盤の8回に一挙3点で逆転勝ちと薄氷の白星。中国戦(3日)は相手投手の自滅に助けられた側面もあり、打撃の内容は乏しかった。キューバ戦(6日)も8回まで無得点と振るわず、復調の兆しは見られなかった。

 重い腰を上げることになりそうだ。3試合でチーム打率は2割1分7厘と低迷。レギュラー格では坂本が8分3厘(12打数1安打)、稲葉が1割1分1厘(9打数1安打)と深刻。打率2割(10打数2安打)の長野は本番前の実戦4試合でも6分3厘(16打数1安打)と絶不調に陥っていた。山本監督が打線で重視しているのは「つなぎ」だ。キーマンの1人だった長野をスタメンから外すことも視野に、新しい攻撃スタイルを模索する。

 背に腹は代えられない。山本監督はこの日、選手たちへ「昨日までは昨日。新たな気持ちでいこう」などと訓示しただけに、打線のリセットを有言実行することになりそうだ。王建民のシンカー対策として、左打者を先発に多く配置する。この日三塁の練習を行った鳥谷、首脳陣からの評価が高い角中らが、長野に代わりリードオフマンの有力候補になりそうだ。

 山本監督は「いろいろなことをやっていきたい。単打でもつながればいい」と狙いを明かした。序盤で主導権を握るために、先取点を奪える布陣を組むとみられる。侍ジャパンの総大将は「武士の情け」を捨て、大一番に挑むことになる。【高山通史】