バットは長さ33・5インチ(85・09センチ)重さ約880グラムで、素材のメープルは昨季と変わらない。わずかに変化を加えたのは打撃部だった。手がけた名和氏は「わずかに細くすることで、トップバランスを手前(グリップ方向)に持ってきた。バットを球に当てる確率を上げるということ」と説明。バットの芯の位置をミリ単位で動かすことは「ほとんど感覚的な部分」だというが、それだけ緻密にこだわる領域に、筒香は立っている。

 昨季は44本塁打、110打点でトップに立ったが、打率は3割2分2厘で首位の巨人坂本(3割4分4厘)に届かず3位だった。思惑通りバットに当てる確率が上がれば、セ・リーグでは31年ぶりの3冠王も夢ではない。

 日本ハム中田が左手首を負傷し、筒香が侍ジャパンの4番を務める可能性が極めて高い。「誰もが世界一に向けてやる。そういう大会」と、その責任を重く受け止めている。吉兆もある。名和氏は、2度目の世界一となった09年WBC決勝韓国戦で、奇跡の勝ち越し打を放ったイチローのバットを手がけている。筒香は「目標はもちろん世界一。その先に何かがある」と言い切った。世界の頂点の先にある3冠王。筒香には、はっきりと見えている。【栗田成芳】