【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)20日(日本時間21日)】世界一奪還を目指す侍ジャパンが、第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準決勝のアメリカ戦に臨む。会場となるドジャースタジアムで公式会見と前日練習が行われ、小久保裕紀監督(45)は「勝つためにやる」と必勝宣言。選手たちも酷暑のアリゾナから移動した疲れを見せず、フリー打撃で柵越えを連発した。ベースボールの大国を倒して野球の力を示し、前回大会の準決勝で敗れたプエルトリコの待つ決勝へ進む。

 同時通訳を介し世界に配信される公式会見。イヤホンを耳にした小久保監督は、よそ行きの言葉を一切排除した。「我々が戦うのはUSA。他のチームのことは考えていない。完全アウェーの雰囲気。のまれない」。最後に「やるか、やられるかの一発勝負。勝つためにやるのが『戦』。そのつもりでやる」と言った。一拍の間を置いて英語に訳され、静かになったところで席を立った。

 ドジャースタジアムでの練習。ケージ裏に日本野球を紡いできた先人がそろい、決戦前の侍たちを見守った。4年前の監督で、プエルトリコに3連覇を阻まれた山本浩二氏。「前回の悔しさを晴らしてくれ」と託した。隣には8年前、同じロスの地で夜空に舞った原辰徳氏がいた。

 「フィールド、芝は超一級品。イレギュラーはしない。あまりアウェー感が出ない。違和感はない」。両翼330フィートは100・6メートル、中堅395フィートは120・4メートル。フリー打撃で立て続けに放り込んだように、球場のサイズに気後れする心配もない。予報は雨。「ロスの雨なんて本当に珍しい」から不敵に笑った。「雨、風の中で野球をやってきたのが侍。プラスに働く。敵は相手チームだけ。すべてを味方に付ければいい」。84年ロス五輪でも金メダル。ドジャースタジアムはビジターではなく、日本球界の聖地だ。

 小久保監督も分かっていた。「珍しく左右対称。日本っぽい球場。予報が雨は、こっちの方が有利」と受け止めた。

 13年前の初夏。人生の師からもらった言葉を忘れていない。ダイエー入団1、2年目に指導を受けた高畠導宏氏(享年60)。亡くなる2週間前、膵臓(すいぞう)がんと最後の闘いをしている病室で「何でも来い。オレは小久保や…。『さあ、いらっしゃい』の精神でいけ…」と、かすれる声で言われた。翌冬、高畠氏が勤めていた福岡・筑紫台高に招かれ、生徒の前で「リーダーになることを嫌がってはだめ。監督になりたい」と誓った。有言実行の将に率いられて-。勝ち戦だ。【宮下敬至】