入場券のお礼にKOで先輩の復帰を待つ。ダブル世界戦(東京・大田区総合体育館)の前日計量が30日、都内で行われ、4選手ともクリアした。WBA世界ライトフライ級王者田口良一(29=ワタナベ)は、初のメインに名刺を手に営業し、新兵器の左アッパーに磨きをかけてきた。同級1位宮崎亮(28)の挑発もかわした王者。過去日本人対決の王者防衛率は92%とデータも後押しする。スーパーフライ級王者河野公平(35)と、先輩の元世界王者内山高志(36)の復帰をお膳立てする防衛を期した。

 田口は思わず噴き出した。にらみ合いの写真撮影で宮崎が迫ってきた。「近すぎ。領域に入られた」と、相手の必死の盛り上げも不発。会見でも挑発されたが「打ち勝つ自信はある」とサラリ。「デビューのころならやられてたかも。いろんな性格の人がいる。僕の周りは平和な人ばかり」と、穏やかな口ぶりに王者の自信も垣間見えた。

 いつもはトリプルの先陣だが、ダブルも河野を差し置いてメインを務める。重圧もあるが責務は感じている。元営業マンの内山を手本に初防衛から毎回名刺を作成。裏はファイティングポーズ写真、表に防衛数と回数分の★印を入れる。今回はV3に★3つの名刺を手にチケット売り。自筆の礼状を同封して送付する。成果は前回から200人増の600人が応援にくる。

 宮崎対策に新兵器のパンチも用意した。11センチ低い宮崎は、左へ体を沈ませるダッキングから中に入る傾向がある。石原トレーナーは「阻止するだけでなく、いい角度で当たるはず」という左アッパーを磨いてきた。左ボディーアッパーは得意だけに多彩さも出る。

 日本人とは3年ぶりも世界戦は初となる。過去31戦の日本人対決で統一戦と決定戦を除くと、24勝2敗と防衛率は92・3%と力強いデータもある。「勝負はリングの上。タイミングでダウンはとれるはず。河野さんと勝って内山さんの復帰を待ちます」。会見はかみ合わなかったがリングではかみ合う防衛を確信。次は内山と再び共演の舞台にするつもりだ。【河合香】