ボクシングのロンドン五輪金メダリスト村田諒太(31=帝拳)が異例ずくめで世界に初挑戦する。3日、WBA世界ミドル級王座決定戦で元世界王者の同級1位アッサン・エンダム(33=フランス)と対戦することを発表。5月20日に東京・有明コロシアムでトリプル世界戦として開催され、興行規模は約5億円。日本の五輪メダリストとして初の世界王者、さらにミドル級で13戦目で戴冠すれば、世界最速(主要4団体で暫定王者のぞく)となる。

  ◇   ◇

 解説 世界的にみたミドル級での王座戴冠の難しさは、多様性にも表れる。欧米人の平均体格に近いため選手層が厚く、歴代王者も全世界に分布する。村田が挑むWBAでは名称変更した62年以降、15カ国、27人の王者が誕生。王者に対する国数の比率では、WBAの17階級で最大である。直近では、WBOをのぞく3団体統一王座ゴロフキン(カザフスタン)が君臨。挑戦者の数自体が限られ、さらに状況を難しくしていた。

 日本人は95年にWBA王者となった竹原が初防衛で敗れてから、同級の世界戦は5連敗中。日本での開催は02年10月以来15年ぶりで、保住が王者ジョッピー(米国)に10回TKO負けした東京・両国国技館までさかのぼる。村田は6人目の挑戦者となる。日本ジム所属では4団体全階級を通じて81人の世界王者が誕生したが、ミドル級の竹原が最重量。体格的には圧倒的に軽量級の選手が多い。

 村田は昨年の4試合で一定の手応えを得た。ただ、異例の13戦目での挑戦が可能になった背景には、五輪金メダリストの知名度はもとより、テレビ局主導で興行が組まれる国内事情もある。テレビ局自体が何度も「世界前哨戦」と銘打つわけにはいかない理由も見え隠れする。【阿部健吾】